第406話
「ハンドくん。遊びに行こ?」
〖 もうしばらくお待ち下さい。
屋台は昼食タイムのため混雑しています 〗
「・・・お昼までまだ1時間あるよ?」
〖 お腹でも空きましたか? 〗
「・・・うーん。
『屋台を見て買い食いしたい』って思うけど、『お腹が空いた』とは違う気がする」
〖 では、何かスイーツを食べますか? 〗
「イチゴのムース?ストロベリーパフェ?」
〖 ご飯の前ですから『イチゴムースのジャム添え』にしましょう 〗
ハンドくんの言葉と共に出されたイチゴムースに目を輝かせるさくら。
実はいま、1階の受付には『女怪獣』が2体出現していたのだ。
ヒナルクを追いかけて宿を探したが、この町の宿は売春宿となったことで追放となっていて泊まれる宿は皆無だった。
「部屋は空いていますか?」
「申し訳ありませんが満室でございます」
「此処に獣人たちが泊まっているでしょう?
私たちはその部屋を使うわ。
部屋のカギを寄越しなさいよ!」
〖 出来ません 〗
「うるさい!
私たちをなんだと思っているのよ!」
〖 では、一応お聞きしますが『どこのナニサマ』でしょうか? 〗
「私たちはあの『ツバサ』のパーティメンバーよ!
いま一緒にいる獣人共はパーティから追放になったのよ!」
〖 そんな話、聞いたこともありませんねー。
根本的な所で違っていますし。
いったい、いつから『ツバサのパーティ』に入ったというんですか? 〗
冒険者と思しき女性2人と受付嬢のやりとりを併設のバーで嘲笑って眺めていた冒険者たちだったが、ひとりの冒険者が受付嬢が『口を動かしていない』ことに気付いた。
さらに受付嬢の前にあるカウンターには『右手の白い手袋』がいる。
「アイツら・・・『ツバサ』相手にケンカ売ってるのかよ」
「そういえば、リーダーは『可愛い少年』だろ?
ユリティアでもリーダーに言い寄ろうとした女連中が、彼らが町を去ったら追いかけて出て行ったって聞いたぜ」
「ああ。連中があの『300階層ダンジョン』を攻略している間に行方不明になったらしいな」
「追いかけてダンジョンに入ったと聞いたぞ」
「いや。ムリだろ。あそこの瘴気は常人ではムリだ。
この前入ったけど、6階以降から急激に強くなるんだぜ。
なんとか30階まで行けたが、あれ以上はムリだ。
オレのパーティは簡易転移石を持ってたから、そこで脱出出来たが・・・
あそこは10階ごとに転移石がないと死ぬぜ」
「そんなにヒドいのか?!」
「お前ら。そんなに弱くなかっただろ?」
「ああ。・・・5階まではザコだ。
しかし、6階からウルフとベア。
それにコカトリスやバジリスクが出てくる。
・・・冗談抜きで強い。
あんな連中を倒して踏破までした『ツバサ』の強さに感服するぜ」
そんな『ツバサのサブリーダー』にケンカを売っている連中を見る冒険者たちの目が冷ややかになるのも仕方がないだろう。




