第40話
「さくら。ヨルクとヒナリも降りておいで」
ドリトスに呼ばれてウッドテーブルまで降りる。
テーブルにはチャーハンやサラダ、サンドウィッチなど所狭しと乗っていた。
「ハンドくんたち、ありがとう!」
ヨルクが肘掛け椅子にさくらを座らせる。
ハンドくんたちは、順番にさくらとハイタッチをしてからポンッと音を立てて消えていく。
その光景を、目を丸くしてみていたヨルクとヒナリに、「あれがさくらの『魔法生物』だ」とセルヴァンが説明する。
「元は『召喚生物』でしょうか?」
「そのようじゃな」
ヒナリの質問にドリトスが返す。
『召喚生物』は、数と経験が一定数を越えると『魔法生物』として認識される。
魔法世界に住んでいるのは変わらないが。
いわば召喚生物が『お客様』の立ち位置なら、魔法生物は『住人』として魔法世界で存在を認められたことになる。
『ハンドくん』の場合は、魔法世界だけでなく神々からも認められた数少ない存在なのだが。
「でもさくらが来てから、そんなに時間は経っていないのでしょう?」
それなのにどうやって『経験』を積んだのでしょう?というヒナリの言葉に、「見たとおりじゃ」とドリトスは笑う。
「彼らはさくらの『世話係』で経験を積んでおる。さくらだけでなく、一緒にいるワシらや神々の世話もしておる」
その言葉に驚くヒナリやヨルクに、「さて。ワシらも頂くとしようかの」と声をかけてさくらの隣に腰掛ける。
反対隣には先にセルヴァンが座っており、さくらの両手に清浄魔法を掛けている。
完全に出遅れた2人はさくらの対面に座った。
正直な話、ヨルクとヒナリは、同族以外ではセルヴァンたち数人の獣人以外とは食事を共にしたことはない。
そのため、さくらやドリトスとの同席での食事に少し緊張していた。
白い手袋のハンドくんたちから、チャーハンをよそってもらったり飲み物も出してもらったりと世話をしてもらい、見たことのない料理も美味しくていつの間にか緊張も解れていた。
「どうしたの?不思議そうな顔をして」
コテンと首を傾げて見てくるさくらに気付いたヒナリが問いかける。
「背中の羽根は~?」
「ん?ああ。座るときにジャマだから仕舞った」
「ずっと出しっぱなしじゃないの?」
「・・・寝るときジャマだろ?」
「さっきは出てたよ?」
「あれは『さくらの布団』代わりよ」
そういえば『天使や悪魔の出てくるマンガ』でも、羽根が出し入れ出来てたっけ。
「羽根を隠してると、『背の高い人』にしか見えないね」
「・・・・・・それ、誉めてるのか?」
「うん!」
さくらに笑顔で肯定されて、ヒナリとヨルクは複雑な表情で顔を見合わせた。
ドリトスとセルヴァンは、さくらに見えないように顔を逸らせて笑いを堪えている。
さくらの言葉に深い意味はない。
ただ「そう思った」だけなのだ。
それに気付いているドリトスとセルヴァンは、翼族の2人が真剣に悩んでいる姿がおかしかった。