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第398話


バティとジェシーは、シーナとルーナの『失敗』を活かし、『冒険者学校の設立』を王都にある冒険者ギルドの本部へ提案した。

王都や主要な街なら、本格的な学校を作ることが可能だろう。

逆に地方の場合、『最低限の知識』だけ持っていれば生き抜くことが出来る。

ただ、『使い方』を書いた冊子があっても識字率が低いため読める冒険者は少ない。

読めなければ、親切に冊子をつけていても『無用の長物』でしかない。

・・・(たきぎ)の火種にしかならないのだ。


バティからの提案を見た本部は、頭から冷水をぶっ掛けられた気分になった。

そうなのだ。

冒険者ギルドの扉を初めて開いた自分たちも『生きるため』に冒険者の道へ進んだのだ。

その頃は自分たちも文字が読めず、周りの人たちに尋ねて説明してもらった。

依頼書にはイラストが描かれていたし、金額も必要個数も分かった。

しかし『依頼品』が何かも、討伐する魔物の棲息(せいそく)地がドコなのかも分からなかった。

しかし聞いた人たちは親切に教えてくれた。

「自分たちも通った道」だからだ。

読めなくて、分からなくて。

同じように周りに聞いて教えてもらった。

そして『キズナ』が生まれていった。


・・・それが冒険者の世界では『当たり前の日常』だった。


さらに、提案をしてきたユリティアの冒険者ギルドでは、数々の問題が起きていた。

新人を侮辱し、『親を喪ったと(おぼ)しき者』を嘲り「家に帰ってママのおっぱいを飲んでろ」と言ったのだ。

・・・あってはならない。

冒険者として言ってはいけない言葉だ。


「親と一緒に死ねばよかったのに」


彼らは新人冒険者にそう言ったのだ。

だが、『冒険者でいられなくなった』のは嘲笑(あざわら)った彼らの方だった。

新人冒険者に一瞬で床に叩きつけられた連中は、全員がショックで気絶した。

さらに、彼らには『神の罰』が与えられたのだ。

それも生者・死者問わず、時間も場所も問わず。

彼らの前に姿を現しては彼らを苦しめていくらしい。


『らしい』というのは、それを『誰も見たことがなかった』からだ。

連中は、今は王都の神殿の地下に保護されている。

まるで仕組まれたように保護が遅れたため、彼らは保護されるまでの間、幻覚に苦しみ、町の店舗を壊して慰謝料を支払い、神聖騎士団が現れて「神の罰を受けている」と判明するまでの間、狂人として扱われ続けていた。


私の(つたな)い頭でも分かる。

最初に幻覚が現れた頃、神殿で呪いが掛けられていないか、神の罰を受けていないかを確認したらしい。

新人冒険者たちを侮辱した時に一緒に嘲笑った者たちが全員、見ているものが違うが『同じ幻覚症状』が現れて悩んでいたのだ。

しかし誰にも呪いや罰は見られなかった。

それに安堵し、自らの言動を恥じて神に謝罪し悔い改めた者は『神の罰』を受けていない。

悔い改めなかった者にだけ、見続けてきた幻覚症状を『神の罰』として受けることになったのだろう。

事前に神殿で呪いも罰も受けていないことを確認していた彼らも神殿側も、『反省しなかった罰』として神が罰を落としたとは気付かなかった。

そんな彼らに『神の罰を受けている』と分かったのは偶然だった。

すでに『冒険者くずれの破落戸(ならずもの)』という不名誉なレッテルを貼られていた彼らは、その日も『酔って暴れた』として牢に入れられていた。

その時は別の酔っ払い同士のケンカがあり、鑑定石で罪名の確認を受けていた。

しかし、酔いの醒めていない酔っ払いが大人しく受けるはずもなく・・・

暴れた拍子に手が鑑定石にあたり、牢の檻の前まで転がった。

それが、幻覚に追い詰められて救いを求めるように檻の外に出ていた腕にあたった。

そして表示されたのだ。

『神の罰を受けし者』という称号を。


王都の地下神殿で彼らは知った。

『神殿で確認後に反省をしなかったがために『神の罰』として幻覚に(さいな)まれ続けることになった』ことを。


彼らは口々に新人冒険者を(ののし)った。

自分たちが新人冒険者に対して嘲笑ったことが原因だと言うのに・・・

あまりにも酷いその言葉に神官が鑑定石を持ってきて、1人の手を乗せさせた。

表示された『称号:銀板に無礼を働いた者』



彼らは生きたまま『絶望という名の地獄に()とされた』のをようやく理解した。


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