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第397話


()めればいいのに、さっき迷宮のことで『脅し』を掛けてきた男が「何様のつもりだ!」と恫喝してきた。

ギルドマスターが現れたことで、気が大きくなったのだろう。

完全に『虎の威を借る狐』状態だ。

・・・あーあ。


『脅迫罪追加ですね』


だよねー。

さらに「このまま、ギルドから『除名』されたいのかね?」と・・・やっちゃったよ。ギルドマスター。

断れば『タダで済むと思うな』という、脅し付き。

私が呆れるのと同時に、遠巻きにしている冒険者たちからもため息が漏れた。

その様子に、さすがに『何かがおかしい』と気付いたようだ。


「おい!『あのガキの名前』は!お前ら確認したんだろう!」


職員たちに向き直り、受付嬢の胸ぐらを掴む。


「あ・・・あの。『ヒナルク』と・・・」


その名前を聞いて、ギルドマスターの顔が一瞬で青褪めた。

冒険者たちからは「詰んだな」「これで此処のギルドも閉鎖かー」「違う町に行くか」との声があがる。

『ヒナルク』の名前を見ていなかったらしい職員たちも「えっ」「ウソでしょ!」と口々に呟き青ざめている。

・・・何を今さら慌てているんだ?

アンタら。散々『無いこと無いこと』でっち上げた作り話をギルドマスターに話して『盛り上がっていた』じゃないか。

受付嬢や数名の職員は『何も分かっていない』ようで、周りの慌てている様子が理解出来ていないようだ。


カウンターの『はね板』をぶち壊しそうな勢いではね上げて、飛び出してきたギルドマスターが私の前で土下座した。

咄嗟に私を庇うように、スゥとルーナが素早く前に出てくれた。

その様子に、冒険者たちから感嘆の声があがる。

他の蒼褪めていた職員たちも同じく出てきたり、その場で土下座する。

分かっていない受付嬢たちは「はあ?何やってるの?」「正気(しょうき)かよ?」と馬鹿にして笑っている。


「大変!大変申し訳ございませんでした!」



「お許しください!」と「すみませんでした!」を口々にしているけど、それは『罰を受けたくない』だけで『反省』はしてないよね。

相手が『私じゃなかった』ら?

あのまま『ギルドからの除名』で、ギルド用のアイテムボックスを取り上げてボックス内の横領?

いやー。ありえねー。


私の言葉にも、身体を床に伏せたままプルプル震えて反論出来ず。

連中の謝罪が『本心かどうか』を知るには・・・


ハンドくんの指示で、ドカドカと警備隊がギルドに入ってきた。

逃げようと裏口に向かった『現状が理解出来ていない受付嬢たち』だったが、そちらからも警備隊が雪崩込んで、問答無用で一網打尽。

だいたい、『逃げ切れる』と思っていたのだろうか?

たとえこの場から逃げ切れたとしても、この町から逃げ出せたとしても、罪状が付いている以上、『他所の町』には入れないのに・・・


「ちくしょう!俺が何したって言うんだ!」と叫んでいた『恫喝男』に、ハンドくんたちがカウンターに置いてあった鑑定石を近付けた。

さすが警備隊の隊員さん。

ハンドくんの『意図』に気付いて、恫喝男の手を鑑定石に乗せてくれた。


『罪状:脅迫』『罪状:恫喝』『罪状:侮辱』に続いて、『称号:銀板に無礼を働いた者』が表示されていた。


私は『鑑定』魔法でそれらを確認。

恫喝も『罪状』になるんだ〜、なんて面白がってた。

鑑定石の内容は誰でも見えちゃうからね〜。

受付嬢たちも、私が『銀板所持者』だと気付いた様子で顔面蒼白。

残念ながら、誰もが『これ以上口を開いたらヤバい』と理解した様子で、言い逃れとかしなかった。



「お怪我はございませんでしたか?」


「はい。大丈夫です。お手数をおかけして申し訳ございません」


頭を下げてお礼を言ったら、「頭を上げてください!治安を守るのが私たちの仕事ですから」と慌てられた。


「それにしても・・・しばらくギルドは閉鎖ですかね」


ギルド内を見回していた隊長の言葉に「でしたら私だけでも残して頂けたら・・・」とギルドマスターが口を挟んだが、「あ、それならすでにユリティアにあるギルドから『3日後には着きます』と連絡頂きました」と話したらガックリと項垂れた。

貴方の今この時点での肩書きは『犯罪者』なんだよ。



「ごっしゅじ〜ん。『だれ』が来るのかな〜?」


「リリィかなー?」


スゥは仲良くなったリリィに来て欲しいのだろう。

しかし、此処は一時的に閉鎖するから、到着次第、依頼処理など色々と仕事があるだろう。


「『事後処理』と『再起動』があるから、新人のリリィには無理だよ。バティ辺りかな?」


「ジェシーも護衛を兼ねて来ると思います」


「誰が来るのか、『3日後』の楽しみだな」


私の言葉に3人は頷いた。

ちなみにバティは、精神的に弱っていたシーナに『冒険者ギルドには宿がある』と教えてくれた受付嬢だ。

その後もシーナとルーナを支えてくれた恩人だ。

リリィは新人の受付嬢で、獣人に対して偏見がない。

ジェシーはギルド専属の護衛騎士だ。

元・冒険者だそうだが、ひざを壊して引退したらしい。

ギルドへ行った時、ちょうどトラブル収束後だったらしく、ジェシーはいくつもの傷を負っていた。

そのため回復薬を1本渡したことがある。

それが・・・『よ〜く効いた』らしく、壊れたヒザまで回復してしまったらしい。


時々、ドロップアイテムで『通常より高い効果を発揮する』レア物が出る。

それらはハンドくんが自分専用のアイテムボックスで管理している。

『回復の効果』を上げるなら問題は無い。

だけど、身体強化などは効果が切れた場合、身体に大きな負担がかかり、人によっては死に至る。

冒険者のように身体を鍛えた人なら筋肉痛で済むが、一般人の場合、急激な血液の流れに血管や心臓が悲鳴をあげてしまう。

ハンドくんがさくらに渡した回復薬がそのレア物だったようだ。

そのため、ジェシーのヒザを含めた傷や痛みを取り去ったようだ。

・・・ハンドくんは『シーナとルーナ。スゥが世話になっている』として、それを渡してくれたらしい。

ジェシーはすでに冒険者の生活からギルドの護衛騎士としての生活に活力を見出していた。

そのため、新たに出来た『冒険者学校』にて、冒険者を導く教官として冒険者だった経験を活かしていくそうだ。


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