第395話
新しい町・・・『ジュスタール』に着いた。
文字通り『新しい町』だ。
『出来てからまだ10年経っていません。
此処に作られたのは、この先にあった村が盗賊団に襲われたからのようです。
問題はここの町は未熟なため、様々な意味で『未熟なものたち』が多いようです』
トラブル回避・・・。
『無理ですね』
・・・だよねー。
『あきらめましょう。
すでに各所へ手配済みです』
ハンドくん。
手がはや〜い。
手配はや〜い。
手ぬかりな〜い。
『・・・さくらちゃん?
途中で『おかしな言葉』が加わっていませんでしたか?』
ん〜〜?
変なこと言ったかな〜?
『困った子ですねー。
また教えたのはヨルクですか。
ダメですよ。ヨルクの言葉を鵜呑みにしたら。
『いい子』じゃないとスイーツが食べられませんよ』
だってー。
『ハンドくんの『ハンド』とは手のこと』って言ったら、「じゃあハンドくんの仕事が早いことは『手が早い』って言うんだな」って。
『おや?
その言い方から察するに、言ったのはヨルクじゃないですね〜。
誰でしょうね〜』
ハンドくんの言葉にさくらは一瞬だけ神の姿を思い浮かべたが、ハンドくんは気付いていないフリをしてさくらの頭を撫でていた。
町に入り、最初に拠点となる宿を探す。
残念ながら、獣人の泊まれる宿が此処にはなかった。
「しゃあない。冒険者ギルドに宿が併設されているから、ソッチ行くか」
「別にキミひとりなら泊めてやってもいいんだぞ。
まあ、いい顔してるから・・・」
「この町の宿は貴方みたいに下卑た連中しかいないんですねえ・・・
『売春宿』や『売春斡旋宿』に看板を変えた方がいいですねえ」
「キサマ・・・殺されたいか」
「それはコチラのセリフだ。
スゥ。3人は先に冒険者ギルドに行って宿を確認してきて」
「私は護衛ですのでご主人のおそばを離れるなど・・・」
「え・・・!?『護衛』だと・・・」
宿屋の店主が一瞬で自分の態度が『宿屋の規約を破った』ことに気付き青褪めた。
宿屋には『従者が他種族であっても奴隷でない以上、同宿を主人が希望した場合断ってはならない』というものがある。
護衛は従者の中でも『信用を得た』職業で、他種族でも人と同類として扱われる。
目の前の少年の言葉では、この町の宿はすべて『規約を破った』ということになる・・・
「すぐに部屋の用意を」
「売春斡旋宿の?」
「え?・・・なぜ」
さくらの視線の先に掲げていた『宿経営許可証』が『売春斡旋宿』に変わってしまっていた。
『売春宿』『売春斡旋宿』は宿屋として認められていない。
この町は日本で言うところの『遊郭』となってしまったのだ。
・・・この時に元・宿屋の店主たちがひとりでも自分のステータスを確認していたら、自分の賞罰に『銀板に無礼を働いた』とついていることに気付いただろう。
「オレ、売春宿に泊まる気はないから」
さくらはそう言って宿を後にする。
扉が閉まった音が店主の耳には大きく響いた。




