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第389話


「シーナ。スゥもルーナも。

『怒気を完全にコントロールするため』だからって、ぶっ倒れちゃうまで鍛錬しちゃダメだよ。

それこそ『意味がない』んだからね」


「はい・・・すみません」


シーナはさくらに深々と頭を下げる。

それにあわせて2人も頭を下げた。


3人は『シーナの暴走』あたりから記憶がほとんど残っていない。

唯一、シーナ自身が『ヨルクが瘴気の影響を受けて暴走した自身に『清浄化魔法』を繰り返しかけて回復させた』ことを覚えているだけだ。

その『覚えていない理由』として、ハンドくんは『瘴気の影響による暴走』とした。


・・・たしかに間違いではない。

シーナの感情が爆発して瘴気を撒き散らしてしまったのだから。


ハンドくんはさくらに『怒気のコントロールの鍛錬に集中しすぎて、怒気と瘴気を読み間違えて身の内に取り込んでしまい、瘴気の影響を多大に受けてしまった』と説明している。

神々の尻拭い(フォロー)のためだ。


「でもなー。さくら。

セルヴァンだって悪いんだぞ。

『助けたら本人のためにならない』って、いっさい手を出さねーんだから」


「手を出せば『解決』にならない」


「だからさー。

コイツらはまだ子供なんだよ。

最初は手を貸してやれって」


「息子たちは自分で『なんとか』出来たぞ」


「アイツらは自分たちで『なんとかするしかなかった』んだろーが!」


「だから『なんとかなった』だろう?」


「『なんとかした』んだよ!」


ヨルクとセルヴァンのやりとりは父子(おやこ)のようで微笑ましい。

しかしヨルクにしてみれば、セルヴァンの『放っておけば自分で解決する道を選ぶ』という教育方針で幼馴染みたちが文字通り『(もが)き苦しむ姿』を見てきた。


「ねえ、ハンドくん。

日本で『獅子は我が子を千尋(せんじん)の谷に落とす』ということわざがあるよね」


〖 違います。それは故事(こじ)ですね。

ことわざは『獅子の子落とし』ですよ。

さくらが言ったのは、ことわざから派生した言葉です。

『我が子に厳しい試練を与えることで、その子がどんな子かを見極めて一人前に育てることができる』という意味です 〗


「ほらみろ。さくらの世界でもことわざになっているんだぞ」


「さくら!騙されるなよ!

セルヴァンは何度も『谷の底に落としてる』からな。

さくらだって落とされるかもしれないぞ〜」


ヨルクに脅されると、心配そうに見上げて「落とす?」と聞いた。

ここは別荘の寝室。

さくらはセルヴァンの『あぐらの中』だ。

そんなさくらの頭を撫でるセルヴァン。


「さくらは『我が子』ではないからな。

そんなことはしない」


〖 大丈夫です。

そんなことになったら、ヨルクを代わりに落とします 〗


「オレかよ!」


〖 『さくらの親』ですから当然です。

重量のある岩を大量に落として埋めて差し上げますから、遠慮なく谷の底に落ちて下さい 〗


「落ちるかー!」


「じゃあ、落とすか?」


「止めんかー!」


ワイワイと話が盛り上がるさくらたちの様子を見て、シーナたちの表情にもだんだん笑顔が戻っていく。

その様子を見たセルヴァンとヨルクは「もう大丈夫だな」と目で会話をしていた。


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