第388話
転生を司る神々がハンドくんたちから『ちゃんと仕事しろや』を受けた夜、眠っているシーナの中から『前世の感情』が完全に抹消された。
わずかに残っていた感情が蘇った原因はやはり『瘴気の影響』だった。
そして『きっかけ』は、住んでいた村が魔獣に襲われたことが原因だった。
『前世で生命を奪われた時と似た状況』
襲ったのが『獣化した獣人』か『魔獣』かの違いはあるが、改めて死の恐怖に襲われたのだ。
そばには『あの時』救えなかった小さな生命。
今回、シーナは2人を守って生き抜いた。
・・・今度は3人で生き抜くことが出来たのだ。
「よく頑張ったな」
懐かしい、優しい声。
『大好きだった貴方』の、不器用だけど自分だけに向けられた愛情。
『子供たちは?』
「ああ。5人で協力し合って国を治めている。
まあ、失敗もいくつかしているが・・・特に大きな問題は起こしていない」
『そう・・・良かった』
遺した子供たちが心配だったの。
・・・そして、貴方のことも。
「今度こそ幸せになれ」
『いいえ。
私は貴方と出会ってから幸せだったわ。
だから『今度も』幸せになるわ』
・・・愛していたわ。私の旦那様。
セルヴァンは眠るシーナを見ていた。
今回の騒動の謝罪として、創造神から『最期の別れ』の時間を貰えた。
声だけのやりとり。
それだけでも十分だった。
3人に話された『前世』と、重なった魔獣の襲撃。
それを聞いたスゥは大きな声で泣き出した。
あの襲撃以降、何度も魔獣に襲われて殺される夢を見ていたのだ。
スゥが眠っている時も気配察知と危険察知を起動しているのは、『魔獣の襲撃で殺される』夢を現実にしないためだ。
今、それをしなくなったのは師匠が守ってくれるからだ。
ルーナは前世ではまだ『生まれる前』だったため、2人のように怖い思いをしていない。
それでも3人の『過去のすべて』を消すことになった。
記憶の消去後。
シーナは3日間眠り続けた。
瘴気がどれだけシーナの身体に負担をかけていたのか・・・
転生を司る神々は、ハンドくんたちの手でさらに『袋叩き』にされたのは言うまでもない。




