第385話
さくらとの昼食タイムは楽しいひと時だった。
「さくらー。セルヴァンのやつ、オレが迎えに行くまで『さくらとの約束』を忘れていたんだぞー」
「俺が忘れていても、ハンドくんが教えてくれるから問題ない」
セルヴァンはそう言いながら、隣に座るさくらの頭を撫でる。
それだけで、さくらは満面の笑みを見せた。
ヨルクとセルヴァンが別荘に入ると、恐竜島に行っていたさくらたちがすでに戻っていて『ハンドくんのお手伝い』をしていた。
さくらはパスタのミートソースを作っていた。
ヒナリはテーブルのセッティングをしていた。
それを見たヨルクが『逆じゃないか?』と思いはしたが、口から出たのは「ただいま。美味そうなニオイだな」だった。
そのことを思い出したさくらが「ヨルクはセルヴァンのところに行ってたの?」と聞いたのだ。
「ヨルクはスゥたちに会ったの?」
「ああ。アイツらも昼飯を一緒に食いに来るのかと思ったんだけどな。
『料理の練習』で自炊しているんだと。
セルヴァンでも料理が出来るからなー」
「セルヴァン。料理出来るの?」
「ん?ああ。さくらみたいに『家庭料理』じゃなく『野営料理』だが」
〖 その方が彼女たちにはイイです。
いま必要なのは『野営に必要な知識』ですから 〗
「だから・・・帰って来ないの?」
寂しそうな声がして全員がさくらを見ると、さくらは俯いていた。
「コッチのことは心配しなくていいから、さくらはセルヴァンに甘えてこい」
ヨルクの言葉にセルヴァンは『隠された意図』に気付いたが何も言わず、「さくら。一緒に丘の上の花畑に行くか?」と言いながらさくらを抱き上げた。
「うん。行く!・・・でも、無人島に戻らなくていいの?」
〖 さくら。今スゥたちは『料理の練習中』です。
そのため、セルヴァンが少しでも遅く戻った方がいいのですよ 〗
左手のハンドくんに頭を撫でられて安心したさくらは「お迎えに来る?」とひとつ確認する。
〖 はい。ですから、時間を気にしないで大丈夫ですよ 〗
「うん。ありがとう」
さくらと左手のハンドくんの会話にヨルクとセルヴァンは『隠された言葉』に気付いた。
『迎えにいくまで、さくらの相手をしろ』
ヨルクに指摘され、さくらが寂しい思いをしていたことに気付いたセルヴァンは、ヨルクやハンドくんたちの配慮に感謝した。
さくらは目を覚ますと、寝室でヒナリに抱かれて寝ていた。
ヒナリはいつも『抱きしめて』寝ているけど、片腕は私の身体・・・肩の下になっている。
私は肩を抜いて、負荷がかからないように出来るが・・・痺れないのだろうか。
以前、ハンドくんに聞いたことがある。
その前から、無人島でハンドくんが魔法を練習して『無重力魔法』を編み出していた。
それ以降、私が寝るときに使ってくれている。
「さくらの重みがシアワセを感じられて嬉しいの」
ヒナリにはそう言われていた。
重さを感じなくなったせいか、最近は『ヒナリの抱き枕』状態。
苦しくないように緩めてくれているが。
ヒナリが私にシアワセを感じるように、私もヒナリの温もりに安らぎを感じている。
・・・小さくアクビをして目をこすると、そのままヒナリにすり寄って目を閉じた。




