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第380話


「えーい!・・・やあー!・・・とおー!・・・けりっ」


最初は勢い良く両腕を振っていたさくら。

最後の『けりっ』は()っちゃく言って足を軽く出したさくらにセルヴァンは苦笑する。

それにタイミングとバランスを崩したシーナが、足を(もつ)れさせて転んだ。


〖 勝負あり!勝者!さくら! 〗


ハンドくんの言葉にさくらはシーナに手を差し出すが、シーナはその手を取らずに立ち上がる。

さくらは気にせず立ち上がったシーナから離れると「お手合わせありがとうございました!」と笑顔で言って礼をする。

そして、ハンドくんが浄化(クリーン)をさくらにかけると、セルヴァンに駆け寄ってそのまま腕の中に飛び込んで行った。

笑顔でさくらを抱きしめたセルヴァンに「ねえセルヴァン。どうだった?!」と嬉しそうに問いかける。


「ちゃんとね。ハンドくんに特訓してもらってるんだよ」


「ああ。さくらは獣人相手によく戦った。

動きも十分だった」


〖 ひとつ問題があるとすれば、まだまだ『読みが甘い』ところですね。

ちゃんと『相手の気配を読んで()けなさい』と教えたでしょう?

誰が『受け流しなさい』なんて(お・し)・え・ま・し・た・か? 〗


「やーん!ごめんなさ〜い!」


ゲンコツに握ったハンドくんに左右の『こめかみ』を挟まれて『グリグリ』されたさくらは、謝りながらセルヴァンにしがみつく。


「さくら。獣人は脚力が強い。

今のあの子たちはまだ子供で、チカラは人間とそれほど変わらない。

だが、大人で武人になると軽く蹴っただけで簡単に樹木を折ってしまえる。

あの子たちみたいに受け流そうと思っても、さくらが蹴り殺される。

だからハンドくんは『必ず避けなさい』と言っているんだ」


セルヴァンが注意を始めると、ハンドくんはさくらへの『教育的指導』を中断していたが、セルヴァンの言葉が終わるとふたたび『グリグリ』の続きが始まった。


「きゃあー!ギブ!ギブ!」


〖 ちゃんと、分・か・り・ま・し・た・か? 〗


「分かったー!

今度から、ちゃんと攻撃は()けるー!

だから、もう『グリグリ』は終わり〜!!」


〖 さくらは『良い子』ですから、『同じこと』はしませんよね〜。

そんなことしたら『あ〜んな美味しいお菓子』も『こ〜んな甘いスイーツ』も食べられなくなりますからね〜 〗


「セルぅ。ハンドくんが脅してくるー」


「ハンドくん。さくらを揶揄うのもほどほどに。

ヨルクと違って、ちゃんと分かったから。な、さくら」


セルヴァンの言葉にコクコクと頷くさくら。

そんなさくらの頭を撫でるハンドくん。


〖 さくら。ヨルクたちが帰って来ましたよ。

セルヴァンはさくらと先に戻って下さい。

スゥたちは、先ほどの『組み手』の反省をしてから戻ります 〗


「ああ。じゃあ、ハンドくん。あとは『頼んだ』よ」


〖 はい。お任せください 〗


セルヴァンはハンドくんに感謝して、さくらを抱き抱えるとハンドくんの転移魔法で別荘に送られた。




〖 さて・・・。

『残された本当の理由』に気付いていますか? 〗


ハンドくんに問われスゥだけ頷く。


「師匠。この先は私にお任せ下さい。

もし補足が御座いましたら、いつでも仰ってください」


〖 分かりました。

この場はスゥに任せましょう 〗


「ありがとうございます」


そう言って頭を下げたスゥは、他の2人・・・シーナに向かうと頬を一発叩いた。

突然のことで動けなかったシーナと、目を丸くしたがその後で俯いたルーナ。


「シーナ・・・。スゥが・・・師匠も、ご主人さまと離れた師範も・・・たぶん、私も分かってる。

・・・なんで、ご主人さまが差し出した手を握らなかったの?」


ルーナは頬を押さえたまま固まっているシーナを見上げた。


「シーナ・・・『ご主人さまに負けたこと、そんなに悔しかった』の?」


「な!・・・そんなこと、な・・・」


「『そんなことあった』でしょう?」


『そんなことない』と言おうとしたシーナのセリフを塞ぐようにルーナが言葉を被せる。


「アレは『タイミングが狂った』から転んだんだよね。

シーナは、魔獣でも魔物でも『規則正しく』襲ってくると思ってる?

ご主人さまがやったように、『足元の魔物』に襲われることだってあるよ。

それに・・・シーナって『腕だけ』で戦っていたけど、『膝から下』に注意してなかったよね。

ご主人さまは、ちゃんと『あらゆる方向』から攻撃したのに、シーナは少し後ろに()けるとか、ほとんど動かなかった」


ルーナの言葉にシーナは目を丸くする。

スゥも、ルーナが『動きをよく見ていた』ことに驚いていた。


「ねえ。『動かせてもらえなかった』時点で負けてたんだよ。

それなのに『負けたこと』を認めないの?」


ルーナの言葉にシーナは地面にへたり込んだ。



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