第38話
他国には時間を指定して『同時通信』を開き、コーティリーン国が『女神に愛されし娘』を翼族と共に殺そうとしたことと、『神々の怒り』を受けている事をすべて伝えた。
そして、最後となったコーティリーン国との通信も話し、「このまま国交を絶つ意志もある」旨を伝えた。
各国の代表も、さすがに「翼族と共に『女神に愛されし娘』を殺そうとした」ことや、「チカラずくで言うことをきかせようとした」ことを危険視している。
「殺しても問題ない」の発言には絶句していたが。
「神が愛している娘を傷つけるとか異常だと思ったが『殺しても問題ない』は最早、常軌を逸脱しているとしか思えない」との発言も見られた。
獣人族とドワーフ族は特に、直接にはお会いしたことのないさくら様を愛でており、『我らが愛し子を!』と怒り狂っている。
両族は後ほど、ドリトス様・セルヴァン様両名から執り成してもらう事になった。
翼族からは『同時通信』後に、通常通信で「エルフ族との問題にさくら様を巻き込んでしまい申し訳なかった」と謝罪された。
神殿を通して神々に謝罪を伝えた方が良いことを話してから、「お二人は無事ですよ」とお伝えすると「感謝する」と言って通信は終了した。
3人の目線は、何も知らずに芝生の上で眠るさくらたちに向けられる。
『神の加護』がなければ、この子たちは今ここにいなかったかもしれない。
・・・永遠に喪われてしまったかもしれないのだ。
3人はその事実に背筋が寒くなった。
神々は決してコーティリーン国をお赦しにはならないだろう。
そう断言出来るくらい、さくら様は神々から愛されている。
そばにいる我々も、さくら様を愛でているのだから。
「改めて誓います」
エルハイゼン国は『聖なる乙女』やさくら様を敬い、全力でお守りすると。
そのためなら、他国との外交停止や国交断絶も已むを得ない。
「大変だぞ」
「わかっています。ですが今回のことで、さくら様を永遠に喪っていたかもしれない。あの時の恐怖を思えば、その程度の苦労など問題ありません」
あの時『何も出来ず見てるしかない』悔しさを味わった。
誰にもあの思いをさせたくない。
だったら『自分が出来ることなら何でもする』。
さくらにまっすぐな目を向けてそう断言するこの若き後継者は、この国を良い方向へと導けるだろう。