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第374話


翌日、スゥたちは結界の中央に出されたウッドテーブルで思い思いの時間を過ごしていた。

スゥはユリティアの本屋で購入した地理や歴史の本を読み、シーナは足し算のドリルを。

ルーナは文字かるたを使って、ハンドくんが並べた単語を声に出して読んだり、ハンドくんの言った単語をかるたを使って並べていた。

ルーナはまだまだ文章を作るまでいかないようだ。



〖 スゥ。自分たちの住んでいた村が何処か覚えていますか? 〗


この国の地図を開いていたスゥにハンドくんが尋ねると、シーナとルーナもスゥの本に目を向ける。


「たぶん・・・この辺だと。

ここの『オグリュ』とは取り引きしてました」


「私たちは討伐した魔獣の肉やアイテムを売却して、小麦などを購入していました」


『オグリュ』は町のようだ。

その北東部をスゥは円を描いた。


〖 では、その『オグリュ』へ向かいましょう 〗


「オグリュへ・・・ですか?」


〖 貴女たちの家族、もしくは村の誰かが逃げ込んだ可能性があるでしょう。

貴女たちの村が魔獣に襲われたのなら、次に襲われるのはこのオグリュです。

だったら、ここに何かしらの情報があると思います 〗


「・・・すぐに行くことは出来ませんか?」


シーナはダンジョンに入っているより、すぐにでも向かいたいのだろう。


「シーナ。私は反対」


「スゥ!スゥはお父さんたちに早く会いたくないの?!」


「会いたいに決まってるでしょ!」


「じゃあ、なんで・・・」


「私たちが弱いまま戻っても『足手まとい』にしかならない。

だったら、ダンジョンで少しでも強くなりたい。

父さんたちみたいに前線で戦えなくても、後方で母さんたちを守れるようにはなりたい」


スゥの言葉に、シーナとルーナは俯いて黙る。


「覚えているでしょう?

襲ってきた魔物がケタ外れに強かったの。

だから、強くなりたい。

あの時、村のみんなが守ってくれたみたいに、今度は私がみんなを守りたい。

そのためには、魔物や魔獣が多く出るダンジョンで確実に強くなって行きたい」


スゥの言葉には強い覚悟が含まれている。


「・・・わたしも。

わたしも、震えながら泣いて動けなかった『あの時』に戻りたくない。

はじめてのダンジョンで、ボスを見た時に『あの時の恐怖』を思い出して動けなくなった。

そのせいで、それまで戦えていた魔物や魔獣にも足が震えて戦えなくなった。

もう二度と、スゥやシーナ。ご主人さまや師匠に迷惑をかけるような・・・あんなこと、したくない。

だから強くなりたい。

後悔しないように心も身体も、もっともっと、強くなりたい」


「・・・ルーナ」


痛々しいほどの決意と覚悟を口にするルーナ。

ずっと後悔していたのだ。

弱い自分のせいで、シーナまで巻き込んでご主人さまの期待を裏切ってパーティから追い出されてしまったことを。


「わたし・・・強くなりたい。

だから、ダンジョンでもっと戦う。

戦って、今度は『守れる側』になりたい」


ルーナは握りしめている(こぶし)にちからを込めて、泣きたい気持ちを無理矢理おさえつける。

そんなルーナの手を、隣に座るスゥが優しく包み込む。


「ルーナ。一緒に強くなろ?

そして、今度は一緒に皆を守ろ?」


スゥの言葉に、ルーナも「うん」と頷いた。



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