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第340話



コカトリスを倒した広場で、スゥは苦無の使い方を教わった。

短剣と違い、逆手(さかて)に持っても手に『しっくり』くる。


〖 慣れるまで不便でしょう。

もしもの時は言ってください。

予備の短剣がありますので何時でも交換します 〗


スゥ担当のハンドくんの言葉に、さくらも同意するように頷く。


「そうだね。慣れた武器でないと、戦闘に支障をきたす。

此処はまだボスじゃないし、何かあれば助けられるけど」


「いえ・・・苦無で頑張ります」


〖 最初は片手だけ短剣にしましょう。

左右で使い慣れてから両手で使えばよいのです 〗


「そうだな。

はじめから出来る人はいないから、まずは『苦無に慣れる』のが先だな。

短剣を使い始めた時みたいに、まずは片手だけで魔獣と戦ってみるか?

『苦無自体』を知るのも必要だよな。

切れ味とか」


〖 では、そろそろ外に出ましょうか。

近付いてきましたよ。

スゥ。何が来ましたか? 〗


「はい。ウルフが3体です。

苦無を1本だけ預かって下さい。

ウルフなら短剣で戦ったことがあるので、苦無と比べられます」


「じゃあ、頑張っておいで」


「はい」


左手の苦無をさくらに預けると、スゥは広場を出て行った。


「さて。・・・『従者失格候補生』の2人は?」


〖 このまま『従者失格』確定ですね。

やる気がなくなったみたいです。

結界とパーティメンバーから解除されて、さらにショックだったみたいですね。

放置されていた武器は取り替えてあります 〗


「スゥが心配してるんだけどな〜」


〖 ダンジョンから出た時に、スゥとは大きく差が出来ますね。

その時に改めてどうするか 〗


「これに関してはねぇ。

自分たちで『進む道』を選んでくれないと・・・

私たちが決める訳にはいかないからね」


〖 このまま放っておきましょう。

スゥは『追いかけてくる』と信じていますが、現状では難しいです。

せめて、私たちがダンジョンから出た時に謝罪して心を入れ替えてついてくるなら良いのですが・・・ 〗


「別れるなら、ユリティアまでは送らなきゃね」


〖 そこから2人で先に向かって旅をしていれば、何処かで会えるでしょう。

その時に今より『成長』していれば、放り出した甲斐がありますね 〗


「その時、スゥはどうするのかな?」


〖 2人について行くなら、きっと彼女たちだけでも大丈夫でしょう。

ですが、2人が精神的にも成長してもらうためには、スゥが同行するのには不向きです。

戦闘でもその他のことでも、スゥに依存してしまうでしょうね 〗


「せめて、私たちが中等度のダンジョンを攻略している間、彼女たちだけの2人パーティで小規模ダンジョンを回っててくれたらいいけど」


〖 この近辺では彼女たちは居づらいでしょう。

少なくとも、我々の従者でありながらパーティから『追い出された』と知れ渡れば、『問題を起こしたもの』のレッテルは貼られますからね。

そうなれば忌避されるでしょうし、次の町や村へ向かっても『獣人』というだけで侮蔑の対象です。

下手したら町に入ることも出来ないでしょう。

やる気があるなら『レベル差があるから、パーティを2つに分けて、2人でも小規模ダンジョンが攻略出来るようにさせるため』と言えるのですが・・・ 〗


「そうなんだよね・・・

まあ、これに関しては此処で話していても、本人たちの気持ち次第だからね。

遅いけど、スゥはウルフ倒せたかな?

あ!『解体のナイフ』貸してあげるの忘れてた。

だから解体の練習をしてるのかな」


〖 ナイフは貸しましたよ。

苦無の使い方を練習してるのではないですか?

私たちが話し合いしてましたし 〗


「そっか。

ハンドくん。この先に休憩出来る場所ある?

スゥに休んでもらいたいんだよね。

あの子1人で頑張ってくれてるから」


〖 だそうですよ?

次の広場は下の階ですが、どうしますか? 〗


ハンドくんの言葉にさくらが広場の入り口を見る。

スゥがモジモジとしているため、「疲れただろ?此処で休むか?」とさくらが聞くと、首を左右に振り「下の階まで行きたいです。其処で休憩・・・あの、『お昼ごはん』が食べたいです」と訴えた。


〖 ちょうどいい時間になりますね 〗


「じゃあ、ちゃちゃーっと魔獣を倒して、お昼ごはんにしよう」


「はい!」


スゥは笑顔で返事をする。

本当はずっと前から広場の外にいた。

ご主人と師匠が、ダンジョンの外にいる2人を見捨てていないこと。

自分を含めて、どうしたら『成長』出来るかを考えてくれていること。

それに、獣人である自分はご主人より体力があるのを知っているのに、自分ひとりで戦っているから休ませたいと気遣ってくれる優しさが嬉しかった。


だから決めた。

私はルーナたちについて行かない。

ご主人について行くと。






「スゥは下の連中を。

上のはオレが片付ける。

ハンドくんはスゥのフォローを。

スゥ。最初に一発『落とす』からね」


「はい!」


下の階に降りて広場に近い場所で、四足魔獣の集団と空を飛ぶ魔獣の集団がお待ちしていました。

スゥが苦無を構えると、さくらが「どか~んと一発!やって行けー!」と『金ダライ』を四足魔獣の上に落とした。

それだけでバタバタと倒れる魔獣たち。

スゥはそれらにとどめを刺していく。

仮死の魔獣が回復するのを避けるためだ。

ハンドくんはスゥの反対側から『白金(プラチナ)のハリセン』で倒していく。

完全に『挟み撃ち』状態の四足魔獣だったが、どうすることも出来ず。

『威圧は感じるのに敵の姿が見えない』ため、四足魔獣は怯えていた。

中にはハリセンに向かって行っては反撃を食らう魔獣もいて、さらに恐怖が増していった。


さくらも光線(レーザー)銃を手に、コウモリと人面蛾に某ゲームに出てくるようなキラービー。

元の世界にも『キラービー』というハチがいたんだよね。

なんて考えていたら『考えごとですか?余裕ですね』とハンドくんに注意された。


『早く片付けないと、お昼ごはんが遠のきますねー。

そうしたら夕飯も遅くなりますね。

デザートまで辿り着きますか?

遅くなれば『おあずけ』ですよ』


ハンドくんも余裕だねー。


『もちろんです。

此処はスゥが苦無の練習するためですからね。

片付けていいなら1分もかけずに片付けますよ?』


ハンドくん、無双・・・。


『銃の扱いに慣れたいのではないですか?』


はーい。

じゃあいっきまーす!


さくらが銃をかまえて引金(トリガー)をゆっくり引く。

銃口から細く白い光が走り、さくらが思い描いた形に光が模様を描く。

もちろん、魔獣の体を貫いて。

出来た模様は『五芒星』。

所謂(いわゆる)『星型』と呼ばれるものだ。


「わ〜い。大きなお星さま〜」


〖 上手に出来ましたね 〗


手を叩いて喜んでいたら、何時の間にかハンドくんが帰ってきてた。

あれ?魔獣は?


『さくらが落とした魔獣が潰してくれましたよ』


飛んでいた魔獣も、大半は光線で体と命を落とし、残った魔獣は鋼のハリセンを持ってるハンドくんたちが袋叩きにしてレベルアップさせたそうだ。


「スゥは?」


〖 『解体のナイフ』で経験値稼ぎをしています 〗


床に二段に重なった魔獣たちの死骸を、スゥはナイフを一突きして片付けていく。

経験値は1体50だから、此処にいたのは80体くらいだっけ?

ってことは、4,000追加・・・ってあれ?

スゥのレベルがすでに70に到達してる!


〖 コカトリス親子をひとりで倒したことと、苦無を使いこなしていること。

そして、今の魔獣撃破ですね 〗


あ!今の解体でレベルが71に上がった。


『さくらは今のレベルはいくつですか?』


えーっと。自分で作った魔石を()ぎ込んでるから、『83,952』だね〜。

ハンドくんは?


『33,738です。

さくらにはまだまだ追いつけませんね。

そういえば『公開ステータス』の方はどうなっていますか?』


「勝手に上がってると思うけど・・・『323』だって。

このレベル、大丈夫かな?」


〖 大丈夫ですよ。

冒険者は実力主義なので、特にレベルは問題になりませんから 〗


「ハンドくんのレベルは?」


〖 『219』になっていますね 〗


「ハンドくんはスゴイよねー。

完全に『実力』だもん」


〖 さくらが魔石でレベルアップした時は『おこぼれ』を貰っていますよ 〗


「でも、ハンドくんはいっぱい頑張ってるもんね」


〖 大切なさくらを守るためです。

さあ。行きましょうか。

スゥの解体作業も、もうすぐ終わりますよ 〗


ハンドくんに促されて歩き出したさくらに気付いたのか、立ち上がったスゥが何かを呟くと、周囲の空間が浄化されたように清々しくなった。


「ご主人!解体作業終わりました!」


「お疲れさま。

もう少ししたら、お昼ごはんにしような」


「はい!」


スゥは昨日今日で何倍も成長した。

でも、さくらは思う。

『スゥに負担を掛けすぎてないか』と。

無邪気に笑ってくれる笑顔は変わらない。

しかし、ルーナと『おバカ』なことをして、シーナに叱られて、ハンドくんに『ピコピコハンマー』で叩かれる。

そんな『子ども部分』を無理矢理捨てさせているんじゃないか、って・・・。

シーナやルーナが一緒にいる時は、『子供らしいスゥ』でいてもいいと思ってる。


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