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第34話




「雛・・・オレたちが怖いか?」


ドリトスに背を押されて近づいたヨルクがさくらに聞く。

やはり2人はさくらを『雛』に選んでいたか。

ドリトスを見ると黙って頷いてきた。


「・・・もう、とんでくれないの?」


セルヴァンの(モフモフ)にしがみついて震えているさくらが俯いて、「私のこと・・・キライになったんだ」と悲しそうに呟くとヨルクが目を丸くした。



「オレたちのせいで、あんなに怖い思いをしただろう?」


ヨルクの言葉に「でもヨルクとヒナリは守ってくれたもん」と小さく呟く。


「ヨルク」


さくらを慰めるように、抱きしめて背を撫でていたセルヴァンに名を呼ばれて顔を上げる。


「さくらは初めて空をとんで『楽しかった』そうだぞ」


セルヴァンの言葉に、涙を浮かべたさくらは何度も頷く。


「よかったのう」


ドリトスはヨルクたちに声をかけ、さくらのもとへ歩いていく。


「そうか。空は楽しかったかね」


「うん!」


満面の笑みで、ドリトスにとんでいた時に遠くの山が銀色に輝いていてキレイだった事や、飛空船を近くで見て大きかった!など話をするさくら。

ドリトスは笑顔で頷きながら、さくらの頭を撫でている。


「もう一度、とんでみるか?」


セルヴァンに言われて「でも・・・」と外を見て言い淀むさくら。

昼前にもかかわらず、厚い雲に覆われた空が赤くなっている。

『飛空船だったモノ』が、まだ燃え上がっているのだろう。

さくらは『何が起きたか』は知らない。

それでも『空の色』で、「大変な事が起きている」ことと『飛空船に攻撃を受けた』ことが結び付いているのだろう。



「そうじゃのう。外はダメじゃが、この屋上庭園の中ならどうかね?」


ドリトスが私の頭を撫でながら提案してくれる。

ドリトスの言うとおり、確かにこの中は広くて高い。

日本の田舎にある『二階建ての一軒家』が入ってもまだ高さに余裕があり、広さもかなりある。

外だと、いつまた狙われるかわからないし・・・

ヨルクを見上げるとまだ戸惑っている表情だった。


「・・・だっこぉ」


私が両手を伸ばすと、ヨルクは逡巡した後に私を抱きかかえる。


「怖くなったら言えよ」


そう言ってまた注意深く、天井近くまで舞い上がる。

ヒナリもそばについていてくれる。

2人はわざと、さくらから外が見えないようにとんでいた。


「あ!お花が咲いてる!」


背の高い、見た目がサボテンに似ている植物の上に、白い花を見つけて手を伸ばす。


「乗り出すな!落っこちるぞ!」


(とげ)が刺さったら痛いわよ」


ヨルクが体勢を起こして、慌ててさくらを引き寄せる。

ヒナリも手を出してさくらを庇う。

さくらは「きいろの花みっけ!」と手を伸ばす。


「手を出したら危ないわ」


「だから落ちるって・・・」


賑やかな子供たち3人は、さっきまで落ち込んでいたことも覚えていないだろう。


「まったくアイツらは・・・」


「『親鳥』たちは過保護すぎるのう」


下では年長者の2人が3人を見守っている。

『雛』のさくらは18歳。

そして『親鳥』は、まだ共に23歳。

しかし、成人が80歳の翼族の中では、『親鳥』の彼らもまた守られるべき幼い『雛鳥』だった。



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