第33話
「セルヴァン様。ドリトス様。申し訳ございません」
ヒナリが頭を下げる。
ヨルクは唇を噛みしめている。
「謝ることはない。2人はさくらを命懸けて守ろうとした。それは俺もドリトスも分かっている。2人共、よくさくらを守って連れ帰ってくれた」
2人に労いの言葉を掛けてやる。
実際、2人は命懸けでさくらを守ろうとしたのだ。
揺り椅子に座り、膝に乗せたさくらを抱きしめて背中を撫でていると「セルぅ・・・」と小さな声が聞こえた。
堅くなっていた身体が少し解れてきている。
「どうした?」
「ヒナリとヨルクを・・・怒る?」
「いや。2人がさくらを守ろうとしたのは、ここからも見えていた」
俺の言葉に『ほうっ』と息を吐くさくら。
それと同時に、身体のチカラがさらに緩む。
きっと2人のことが心配だったのだろう。
「あのエルフたち、私を狙ったの?」
「それは分からない。さくらが狙われる理由はないからな」
「あるよ。・・・『神の加護』」
「・・・さくら」
「それと『天罰騒動』の『仕返し』。あれを『私のせい』って逆恨みしてたら」
「あれは『さくらのせい』ではない」
安心させようと、さくらを強く抱きしめる。
そう。あれはアストラム本人が責められるべき問題であって、さくらが自身を責める必要は無い。
「・・・・・・・・・やっぱり瘴気が」
「ン?」
さくらの小さな声が聞こえたが、聞き返したら首を左右に振った。
「それより、初めて空をとんでどうだった?」
頭を撫でながら、あえて別の話を聞く。
少しでも楽しい話を。
「あのね!私が怖くないようにって、注意してとんでくれたの!」
さくらは目を輝かせて話をしだした。




