第320話
『何処の世界』でも一緒のようで『拾得物はそのまま届ける』のがルール。
決して『開けて中身を確認』してはいけない。
日本と違うのは、此処では『冒険者のものと一見で分かるものはギルド』へ。
『それ以外は警備隊詰所』へ。
分からなければ、『とりあえずギルド』へ。
もし『冒険者の遺失物』を『ギルドに届けた』場合、ちゃんと『ごほうび』がある。
『遺失物』の所有者となるパーティの生存が確認されれば、ギルドマスターがアイテムボックスから『拾得者の欲しいもの3点』か『金貨100枚』が渡される。
逆に所有者が死んでいた場合、『死に関与していない』と分かれば『拾得物すべて』が贈られる。
それを踏まえつつ、『パーティが全滅』しているのに出会した場合、冒険者には『遺品回収』が『緊急依頼』となる。
しかし『理由』があって回収が不可能の場合は、すぐに『近くのギルド』へ報告する『義務』がある。
その『理由』には、『強敵の行動範囲内』などがある。
つまり『無理せず『通報』しろ』ということだ。
通報を受けたギルドは『遺品回収依頼』を出し、依頼に挑戦するパーティには『回収用アイテムボックス』が渡される。
『回収用アイテムボックス』は、周辺の『遺品』を根こそぎ回収する。
場合によっては『冒険者の遺体や遺骨』も回収される。
『別の言い方』をするなら、「誰だって『遺品』とか『遺体』を見たくないし触れたくないですよねぇ」(某町冒険者ギルド受付嬢・談)との事らしい。
ちなみに『使い方』は簡単だ。
『現場』に行って、鉄製の『回収用アイテムボックス』の蓋を開けるだけだ。
その際に『ターゲット』へ向けて「回収」と言うだけで、『その先』にあるものを『風魔法』が回収する。
そして回収が終われば、勝手に蓋が閉まって『封印』される。
それをギルドに届ければ『依頼完了』だ。
『回収範囲』は扇状で1キロ。
そのため、依頼以外の『回収』も知らずにしていることもあるそうだ。
その場合は『報酬』が上乗せされる。
『100年以上前の行方不明者』や、地面の中に隠された『瓦解した組織のアジトの盗品』なども『知らずに回収』していたこともあったらしい。
その時は『国宝級の遺物』もあったために、パーティ全員に『金貨1万枚』と『金板』、そして『貴族階級』を与えられた。
しかし、自由気ままな『冒険者』を辞める気がなかったパーティメンバーは『貴族階級』と『金板』を辞退したという。
「「カッコイイー!」」
ルーナとスゥが目を輝かせて『続き』を知りたかったが、その人たちは以降『表舞台』に現れなくなったそうだ。
「残念だったな」
そう言って2人の頭を撫でる。
シュンと落ち込んでいた2人だったが、『何か』を思いついたようだ。
両手を握り合って、しきりに頷きあっている。
・・・『自分たちも『正義の味方』になろう』ってことかな?
『彼女たちの場合『自分たちも『カッコイイ』を目指そう』でしょうね』
今は『冒険者登録』のため、丸テーブルに移動していた。
パーティには『5人』の名前が登録されて、今は個々の『鉄板』が出来上がるのを待っていた。
・・・そう『5人』。
パーティに名前はない。
そして、リーダーが『ヒナルク』。
サブリーダーに『ハンド』。
メンバーに『マルシェイナ』『エスティラ』『シュピルナ』。
パーティには『魔法生物でも可』だったのだ。
そして『パーティメンバー』のため、ハンドくんたちも一緒に『レベルアップ』出来る。
宿に泊まるときは『今まで通り』で良いそうだ。
ところで『何故そうなったのか』というと、『サブリーダー』が必要だったからだ。
リーダーは速攻で『ヒナルク』となった。
しかしサブリーダーはシーナが「自分たちには『不適格』です」と断ったのだ。
だからといってサブリーダーを『空欄』には出来ない。
その時に「何方か『召喚生物』をお連れではないですか?パーティメンバーは召喚生物でも大丈夫ですよ」と言われた。
それでハンドくんを『サブリーダー』にして登録を頼んでみたら、あっさり『承認』されたのだ。
登録名を『ハンドくん』ではなく『ハンド』にしたのは『『ハンドくん』さん』と呼ばれる可能性があったからだ。
そうなったら、私が『呼び捨て』にしてるみたいじゃない!
『さくらは『私たちの主人』なんですから『呼び捨て』で良いのです』
違う!
私は『ハンドくんたちの主人』じゃない!
『ハンドくん』は私の『大切な半身』なの!
『もうひとりの『私』』なの!
『最初の私の声』に反応して出てきてくれたんだもん!
だから、誰からも『呼び捨て』にされないように『ハンドくん』ってつけたんだもん!
『分かりました』
『それでしたら『ハンド』と致しましょう』
『誰も『ハンドくん』が『正式名称』だとは気付きませんよ』
ハンドくんに背中を撫でられて、気持ちが落ち着いていく。
そっと両手を合わせるとスーッと背筋を下から上へと『何か』が走った。
これは『澱が浄化されて『魔石』になっていく』時の感覚だ。
少しブルッと震えると、それに気付いたのだろう。
スゥが「ご主人、大丈夫?」と小声で聞いてきた。
「ん。ありがとう。大丈夫だよ」と答えるが、心配する目は変わらない。
どうしようかと思ったと同時に「お待たせしました」と受付嬢の声がした。
どうやら『鉄板』が完成したようだ。
「さあ。受け取りに行こうか」
そう言ってイスから立ち上がると3人も立ち上がる。
そしてルーナとスゥが真っ先にカウンターへと駆け出した。
カウンターには『5人分の鉄板』と『冒険者用アイテムボックス』が置かれていた。
ちなみに私が『解錠』したアイテムボックスは『説明用』のため何も起きなかった。
『正しい解錠』の場合は『消滅』しないらしい。
「へぇ~」と言いながらアイテムボックスに手を伸ばすと、ハンドくんに取り上げられた。
〖 また『解錠』する気ですか? 〗
「え?だって『オレたち』のだから『大丈夫』だろ?」
〖 『登録』が済んだアイテムボックスは『解錠の必要がない』って言われたのを忘れましたか? 〗
「・・・言われたっけ?」
〖 これは私が預かります 〗
ハンドくんの言葉に黙って頷く。
実はハンドくんから『代わりに『寄木細工の秘密箱』をネットで購入しますから』って言われたのだ。
私も『みんなのもの』を開けちゃうより『自分のもの』を開けた方が『楽しい』もんね。
でも、なんで『びっくり箱』みたいに簡単にしないんだろ。
『寄木細工の箱』なんて、面白くて開けたくなっちゃうよ。
『本当に・・・』
『『難しくすればするほど開けたくなる病』という『難病』を抱えている病人もいるというのに』
へぇ~。大変だねぇ。
・・・『当の本人』は全然分かっていなかった。




