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第32話



そんなときだった。

飛空船から光が放たれた。


「「さくら!」」


さくらたちのいる方角を見ると、3人は無事のようだ。

・・・いや。

今度は赤い光が飛空船から放たれようとしている。

間に合わないと判断したヨルクたちは、さくらを真ん中に挟んで守るように抱き合う。



「あれは『(ガイ)』か!?」


ドリトスは驚きの声をあげる。

『鎧』とは、親が雛を命懸けで守る『最強で最悪』な姿だ。

親が生命を(なげう)って雛を護るため、雛は無傷で助かる。

・・・ただし、親は共に魂ごと消滅すると言われている。

そして残された雛も大半は心を病んでしまう。


ヒナリとヨルクは、さくらの為にその『鎧』を展開しようとしていた。


『鎧』は攻撃を受けた瞬間に展開される。

ドリトスもセルヴァンも、ただ遠くから見ている事しか出来なかった。



しかし、3人に迫っていた赤い光が、突然遠ざかっていくのが屋上庭園からでも分かった。

赤い光は飛空船が見えなくなるほど大きくなり、火柱が上がって数秒後に爆発音が、十数秒後には爆風が王城まで届いた。

王城の結界ですら破られそうなほど圧の強い爆風は、神の守護が働いた最上階を除くすべての窓ガラスにヒビを走らせた。

・・・王城からでも、飛空船が墜落したことは十分分かった。



そんな中、3人は白い光に包まれて身動きひとつしない。

光の中は爆発音が届いていないのか。

それ以前に、爆風からも守られていたのか・・・



「あれは・・・『乙女の魔石』の光、か?」


ドリトスの言うとおり、以前さくらが出した『乙女の魔石』にマクニカが真偽を疑って魔力を流したことがある。

さくらが出したのは従来の『乙女の魔石』と違い、あまりにも大きかったのだ。

あの時発した、清浄で柔らかい・・・さくらに似た優しい光に似ていた。



さくらたちを覆っていた光がだんだん弱まり、まずヒナリが辺りを見回す。

続いてヨルクも顔を上げ、2人は火柱に顔を向ける。

そこでようやくさくらの様子が分かった。

両目を(つぶ)って身体を小さくしている。

2人はさくらを見て、ヒナリが下へ何か合図をしてから戻ってきた。




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