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第315話



車を降りて10分もしないで『ユリティア』の城門に辿り着いた。

此処も『町』だが、中世のお城みたいに頑丈な城壁に囲まれてる。

ハンドくんの話だと『魔獣から人々を守るためと『犯罪者を入れない』ため』らしい。

『村』は柵だったり『ブロック壁』や『土壁』が殆どだ。

だからこそ『魔獣被害』が多い。


・・・シーナたちの村みたいに。



門番に銀板を渡し「彼女たちはオレの『従者』です」と伝える。

石の台に銀板を置いた門番は、すぐに「はいよ」と返された。

「ありがとう」と言って横へ移動し、彼女たちに場所を譲る。

最初はシーナからだ。

銅板を渡し、名前を問われると「『マルシェイナ』と言います」と答えた。

そして『武器』を差し出す。

木製の槍で『刃』には布が巻かれていて、町に持ち込めるようにしてある。

鑑定石に武器を乗せると『木製武器︰槍』と表示された。

「いいよ」と武器と銅板を返されて、「ありがとうございます」と頭を下げてから私の背後へつく。


次はルーナが銅板を渡した。

ルーナは緊張した表情で直立不動で立っている。

名前を聞かれて「『シュピルナ』・・・です」と小さな声で答える。

武器を渡すように言われて、腰につけた短剣を渡す。

鑑定石に乗せると『木製武器︰短剣』と表示された。

「ほら。もういいぞ」と短剣と銅板を返されると、やっと緊張が解れたのか「ありがとうございました!」とペコリとお辞儀をして駆けてきた。

すぐにシーナが私の後ろに連れていき、短剣を腰に装備させる。


『主人』である私が『従者』の身支度をする訳にはいかない。

少なくとも『第三者の前』では。

それはハンドくんから厳しくしつけられている。

しかし緊張から解放されて忘れてしまったのだろう。

シーナがすぐに動いたため、門番には気付かれていないようだ。


最後になったスゥは銅板を渡しながら「『エスティラ』です」と先に名乗り、武器も手渡した。

門番は頷いて受け取り銅板を石の台に乗せて名前を確認すると、武器を石の台に乗せる。

ルーナと同じく『木製武器︰短剣』と表示されると「もういいぞ」とスゥに返す。

スゥはその場でスッと銅板をしまい、腰に短剣を装着すると「ありがとうございます」と礼儀正しく頭を下げる。



「幼いが、それなりにちゃんと『礼儀』は出来ているな」


「ありがとうございます。まだ2人は幼いですが『伸び代(のびしろ)』は大きいと期待しています」


「ああ。アンタも『若い』が他の『銀板ども』と違い、そいつらを『大切』にしているんだな」


「はい。オレの大切な『旅の仲間』です」



さくらが門番と一緒に誉めると、後ろに控えているスゥとルーナが顔を合わせてニッコリ笑う。

シーナも誇らしそうに背筋を伸ばした。



「この町で彼女らと一緒に泊まれる宿はありますか?」


「そうなると『銀板専用』には泊まれんぞ」


「構いませんよ」


「じゃあ『黄花おうか亭』か『鯨亭』だな」


「料理が美味い方は?」


「それなら『鯨亭』がオススメだな」



「ボズに聞いた」と言ってくれるか?

道順を教えると最後に門番が言った。

さくらが「ああ」と答えると紙に何かを書いて小さな手提げバッグを手渡してきた。

シーナがそれを受け取ってからさくらに渡す。



「そいつをついでに渡してくれ」


「ああ。分かった。じゃな」


「ご主人さま?」


「町の探索はまず『寝る場所を確保』してからだ」


「はい!」



楽しそうに町へ入る4人の背中を、門番ことボズは意味ありげにニヤリと笑った。






ボズに紹介された『鯨亭』は宿屋の隣に酒場があり、外観は別棟だったが中は繋がっていた。

向かって右の扉に木の看板が掲げられていた。

ちなみに左側の建物には『酒樽』のマークがついた看板だ。


スゥが真っ先に扉を開けて中に入る。

続けてルーナが入り、さくらの後からシーナが宿屋へ入った。



「いらっしゃい。泊まり客?」


「はい。此方を『ご主人』からお預かりしました」


「あー。スマンね。客に自分の『荷物』を預けるなんて」



シーナが手提げバッグをカウンターの『女主人』に差し出すと困った表情を見せた。

シーナの『嗅覚』が手提げバッグに残っていた『女主人』の匂いを嗅ぎとっていた。

中に入っていた手紙に目を通すと「何日泊まるんだい?」と聞いてきた。



「とりあえず10日で」


「その程度かい?」


「いや。『町の中』をまだ知らねーからな」

「場合によっては延長する可能性もある」


「それもそうか。まあこの町が『滞在したくなる町』になることを願ってるよ」



女主人はそう言うと後ろの棚からカギを取り出してカウンターに4本並べる。



「うちは隣が『食堂』だ。うちの客なら毎食タダだが、飲み物には金がいる」



出来れば1日3食までにしてほしいが。

女主人がそう呟いたのは、スゥとルーナが手を握り合って喜んだからだ。

すぐにシーナが2人を両脇に抱えて大人しくさせた。

2人は抱えられると同時にぶらーんと大人しくなる。

ちょうど日本の『犬猫』が親に首筋を咥えられると大人しくなるように。


その様子を見て女主人は苦笑する。



「多分、食堂を使うのは朝と晩だけで、昼は外で食べると思います」



さくらがそう言うと「天気の悪い時とか無理しなくて構わないからね」と恐縮した。


じゃあ一番奥とその手前の部屋のカギだよ。

そう言われてカギを渡されたが、まだ宿泊料金を支払っていない。



「あー。・・・そいつは亭主が帰って来てから直接聞いとくれ」



困った表情の女主人にバッグに入っていた『手紙』を見せてくれた。

そこには【 コイツらには奥と手前の部屋を貸せ。金は取るな 】と書いてあった。

確かにこれでは困る。



「ああ。分かった。直接聞くよ」



そう言ってカギを受け取る。

ひとつだけ離されて差し出されたカギが『一番奥の部屋』用だろう。



「じゃあ、世話になります」



さくらがペコリと頭を下げると、後ろの3人も「「「お世話になります」」」と声を揃えて頭を下げた。

スゥとルーナはシーナから降ろされていたが、手はシーナに掴まれている。

先に階段を上がるさくらを追いかけようとして、再びシーナの両脇に抱えられた2人は、また大人しくなる。


その姿を、女主人は微笑んで見送った。






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