第313話
彼方此方の村に寄ったり、綺麗な風景が見られる場所に寄ったりして、エンテュースから一番近い町まで一週間かかった。
ナビに『観光名所』があり、周辺の『キレイな場所』を検索できる。
そんな場所を巡ってきたのだ。
途中に、端から端まで何十メートルもある大きな『石舞台』もあって、その上でシーナたちは『鍛錬』していた。
暑い『陽の光』を浴び、石舞台が『熱を反射』する。
そのため、『通常の鍛錬以上』に過酷だったようだ。
ちなみに私はみんなが鍛錬してる時も同じ『石舞台の上』にいた。
しかし『帽子』の『陽射し避け』効果に、『翼族の羽衣』の『水の結界』効果とポンチョの『防熱』効果などのおかけで、まるで初夏の涼しい場所にいるようだった。
それにハンドくんに言われたんだよね。
『彼女たちの『やる気』を出させるために、この場にいてください』って。
その代わり、メニュー画面で本を読んでて良いんだって。
ということで『読書』しつつ鍛錬を見守っていた。
「「ご主人さま〜!」」
スゥとルーナが嬉しそうに駆け寄ってきた。
「鍛錬はもう終わり?」
「いえ。休憩したらまた鍛錬を続けます」
「お昼なの〜」
「ごはんなの〜」
休憩なら、ということで『私の魔石』で石舞台に結界を張る。
途端に周囲の空気が涼しくなったようでスゥとルーナが「「すずしー」」と目を閉じて喜ぶ。
「ごはん食べるんでしょ?浄化魔法はちゃんとかけた?」と聞くと途端に耳が元気なく垂れる。
「まだー」
「上手く出来なかったのー」
「「ご主人さま。かけてくださ〜い」」
〖 自分でやらなければ『練習』になりませんよ 〗
「そうね。『助けた相手にかけてあげる』のも『正義の味方』なら『当たり前』だもの」
ハンドくんと私の言葉に2人はまた頑張る。
シーナは『手の浄化』はしたようだ。
しかし「シーナ。『汗をかいた後』は全身に浄化魔法をかけないとダメだよ」と教えると目を丸くした。
犬種でない私には『臭いが分からない』と思ったようだ。
しかし『汗臭い』は犬種でなくても気付くものだ。
〖 シーナ。それは『ご主人さま』に対して『失礼』ですよ 〗とハンドくんに窘められるとシュンとなり俯く。
『臭いが分からないだろう』というのは相手が私じゃなくても『失礼な話』なのだ。
シーナがハンドくんにその注意を受けていると、魔法の練習をしていたスゥとルーナもその場で正座をして話を聞いていた。
ハンドくん。そろそろゴハンにしよ?
そうチャットで話しかけると『分かりました』と返してくれた。
「ねえ。シーナ」
「はい・・・」
「私は『犬種は匂いに敏感』だって知ってる」
「だから『強い匂い』がするものには『注意』しているよ?」
「でも『私は匂いが全然気にならない』からって注意しなかったらどう?」
「シーナもルーナも、ずっと『ガマン』するの?」
私の言葉に、シーナだけでなくスゥもルーナも驚いた表情で私を見た。
思わず『此処に『ぬか味噌』や『キムチ』を出したらすごいことになりそう』と思ったが、可哀想だから止めておこう。
『では今度『バツ』として出してみましょう』とハンドくんの『バツのひとつ』にリストされたのだった。
その時、思わずそのキムチで『キムチ鍋』や『キムチチャーハン』を作りたいなーと思ってしまった。
残念ながら、そのリストには『納豆』が含まれている。
それも『刻んだネギ入り』。
納豆かけゴハンにしようか。
パンに挟んでもいいよね〜。
『納豆キムチ』も美味しいよね〜。
『チーズタッカルビ』も美味しいよね〜。
実は私も日本刀『鵡鳳』を振り回している。
重力を感じない武器なんて『危機感』がない。
それに『日本刀』であっても武道をしたことがない。
そのため、『使いこなせる』までは『刃が当たってもケガをしない』ように『ゴム製透明カバー』が付けられている。
それでも『武道はテレビでみた』ことがあるし『時代劇』でもみてたから『見様見真似』で動いているだけだ。
『剣術』はカンストしているから、『実戦』に問題はないらしい。
でもね。『慣れていない』と『光線銃』の時みたいに『失敗』は出来ないから・・・
相手になってくれるハンドくんは『鋼鉄のハリセン』にやはり『ゴム製透明カバー』をつけて、日本刀が『刃こぼれ』しないようにしてくれている。
もし武器に『不具合』が起きても、アイテムボックスに戻せば『元通り』になるから大丈夫だろう。
ハンドくんが心配しているのは『欠けた刃で私がケガをするのではないか』ということだ。
ハンドくん自身も『鍛錬』をしている。
エンテュースで私を庇った時に『私の腕にぶつかってしまった』。
それを『庇いきれなかった』と思っているようだ。
あの時着てたコーディガンは『防刃』が付いていたから、無傷でいられただろう。
しかしハンドくんは『刃を受ければ『痛み』はあります』という。
確かに私の腕に『ハンドくんがぶつかった』時に『衝撃』はあったのだ。
ハンドくんが言うにはあの時はハンドくんだったから良かったが、『攻撃を受けた』場合は『痛み』もあるしアザも出来るらしい。
『大切なさくらにケガをさせられません』と言って頭を撫でてくれた。
もちろん『約束』した通りに、ハンドくんたちも『ケガをしない』んだよね?
そう聞いたら『もちろんですよ』『『約束』しましたからね』『さくらとの約束は絶対です』と言ってくれた。
私とハンドくんの『打ち合い』は『見てて凄かった』らしく、終わってからスゥとルーナは興奮しながら周りをとび回っていた。
シーナは一緒に燥ぎたかったようだが、必死にガマンして「2人とも。ご主人様を休ませてさしあげないと・・・」と止める。
私も「2人ともいい加減にしないと・・・」と言ったところでスパパパパーンッと音が響いて、思わず「あ~あ。・・・だから言ったのに」と呟いた。
ハリセンで叩かれた2人は痛みでしゃがみこむ。
・・・・・・ヨルクを見ているようだ。
ハンドくんの『重力魔法』で作られた『丸い球体』の中に保護されて、宙にプカプカ浮かんでいるからそう思ったのかもしれない。
よくセルヴァンに『お姫様だっこ』されて、ヨルクがハンドくんのハリセンを頭部に受けてしゃがみ込んでいる姿を見てたっけ。
〖 あなたたち2人は『鍛錬で疲れた身体を労る』という『思いやり』がないようですね 〗
〖 どうやら日々の鍛錬では『甘い』ようです 〗
〖 『いい』というまで鍛錬していなさい 〗
ハンドくんの言葉に「「えー!」」と口を揃えたが、〖 このままでは『おやつ抜き』だけでなく『夕飯も睡眠もなし』で鍛錬することになりますよ 〗と言われて、慌てて鍛錬『組み手』を開始した。
ハンドくんはさらに2人の場所だけ『結界解除』をして陽の熱と反射熱でさらに『ハード』にしている。
無重力空間から戻された私は、シーナとハンドくんと一緒に『結界の中』だ。
シーナに『日本刀を見せてください』と言われて鞘に入れたままの日本刀を取り出す。
両手に『ズシン』とかかる『重さ』に驚いたのだろう。
そのままの状態で固まっていた。
どうかしたのか聞いたらハッとして「ありがとうございます」と言ったので、日本刀を受け取ってアイテムボックスにしまう。
そして「私も鍛錬に戻ります」と立ち上がった。
結界を解除すると飛び出していき、『シーナ担当のハンドくんたち』の『鍛錬』を受け出した。
シーナの『やる気』に触発されたのか、スゥとルーナはさらに真剣な表情で『組み手』を再開した。
スゥもルーナも、『手刀』や『足払い』などは『獣人族』のせいか『瞬発力』が高い。
ただ『幼い』ために『チカラ』が弱い。
それを『俊敏性』でカバーしている状態だ。
ハンドくんたちはそれを活かして『相手の攻撃を躱しつつ、弱くても攻撃回数を増やす』ことに重点を置いているようだ。
・・・ハンドくんたちは誰から教わったの?
『ほとんど独学ですが、セルヴァンにも協力して頂きました』
さすがセルヴァンだね。
『はい。『武術』だけでなく『武器の扱い』も詳しいです』
じゃあ、あとは『魔法』だね。
私たちは『魔法』というより『思い通り』だもんね。
『そちらはドリトスが詳しいですよ』
じゃあハンドくんたちにお任せしても?
『大丈夫です』
『さくらは『冒険旅行を楽しんで』良いのですよ』
・・・『ハンドくん』は?
『自分はいつも『さくらと一緒』ですよ』
『さくらの『専任世話係』ですから』
ハンドくんに優しく頭を撫でられて、嬉しそうに笑うさくらだった。




