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第311話



「ところでヨルク。貴方は『此処の植物調査』を本当にするつもりでいるのですか?」


ジタンの言葉に全員の視線がヨルクに集中する。


「ああ。できればやりたい」

「だから『さっきの提案』を受けようと思う」


ヨルクはそう言って恐竜たちに向く。


「魔獣島に行く時は『護衛』を頼めるか?」


恐竜たちは顔を見合わせる。

そしてティラノに視線が向かう。

彼らはティラノが『自分たちのリーダー』と認めているようだ。



[ それは『さくらのため』になるの? ]


「ああ。『この世界の瘴気』が少しでも薄くなれば、さくらは『今より』元気になれる」

「オレは・・・『オレたち』はそう信じて『植物研究』をしている」


ヨルクの隣にジタンが並ぶ。


「はい。さくら様は『身体の周囲』に結界を張って、その中を『浄化』することで『外』に出られています」

「別の言葉にするなら、『そこまでしないと生きられない』のです」


ハンドくんが、まだ研究中の『同時通訳』魔法を使ってくれているため、少しのタイムラグで恐竜たちの『言葉』が分かる。

生まれて間もないせいか、思考はまだ幼いようだ。



[ さくらのため? ]


[ さくらが元気になるため? ]


[ 『ごしゅじんさま』さっきも寝てた ]


[ 元気になったら『ご主人さま』と、もっと遊べる? ]


[ あそべなくなったら? ]


[ そうなったら『さくらが泣く』 ]


[ ぼくたち『ごしゅじんさま』泣くの見たくない]



恐竜たちは口々に『自分の思い』を口にする。

ハンドくんと神々が、恐竜たちの『質問』に一つずつ答えていく。

それもすぐに『答え』が出た。

ティラノがヨルクに向く。


[ 『となりにいく』時は『守る』 ]

[ でも『ごはん』じゃないから『追い払う』だけ ]

[ なにか起きたら、すぐに『こっちへもどる』。やくそくして ]


〖 一応、自分たちの方からも何人か『付き添い』ます 〗

〖 ですが『危険なことはしない』と約束して下さい 〗



さくらとヒナリが来る前の『やり取り』も、この『約束』があったからか。


「約束する。『危険なことはしない』し『何か起きればすぐに此方(こちら)へ戻る』と」


これは生命をかけた『大事な契約』だ。

そのため、ヨルクは真面目な表情で『約束』を口にする。

この場には、セルヴァンたちだけでなく『神々』もいる。

必然的に『誓約の立会人』となってくれたのだ。



「『誓約』は()された」


創造神がそう『宣言』すると、ヨルクとティラノがキラキラと光る。



「ねえ。どうしたの?何かあったの?」


さくらの声が突然響いた。


〖 さくら。どうしました? 〗


「何かあったのか!」


さくらのもとへと走り出そうとするセルヴァンやヨルクは、ハンドくんたちに『取り押さえられる』。

その状態でもヨルクはさくらに声をかける。


「あのね。島が『ウレシイ』って喜んでいるの」

「みんなが『仲良し』になるのがウレシイって」

「『ウレシイ』がいっぱいになると『島が豊かになる』んだって」


「・・・誰が『そのようなこと』を?」


「この島!」


ジタンの呟きはさくらに届いたようだ。

以前に聞いたさくらの話だと、『別荘島』にも『他の無人島』にも『島の意思』が存在している。

その『島の意思』が『喜んでいる』らしい。


「この島と隣の島にある『珍しい植物の研究』がしたいって言ったら、恐竜たちが協力してくれることになったんだ」


「だから喜んでいるんだね」


「喜んでいるか?」


「うん」


さくらからも嬉しそうな声が聞こえる。



〖 さくらは何をしていますか? 〗


「アンキロの背中に乗って『恐竜島』観光中だよ。あ!『木の実』なってる〜!」


「きゃー!ダメー!さくら!それ食べちゃダメぇー!」

「ペッしなさい!まだ『安全』か分からないのよ!」



ヒナリの悲鳴が『直接』耳に届いた。

さくらは『風魔法』で声を届けてきていたが、案外近い所にいるのだろうか。



「ハンドくん」


〖 此処にある果実はすべて、食べても大丈夫なものです 〗


「そうよ。さくらが遊びに来る恐竜島(場所)に『食べられないもの』なんて植えないわ」


「何でもすぐに『口にする』子だもの。ねぇ?」


「さくらの世界にある『果物』を、此方(こちら)用に『作り変えた』ものよ」


「キミたちの『研究』には使えない『特別製』だ」


「植物を『作り変える』ことは可能なのですか?」


「ああ。『種の状態』でならな」


「それを『植物』に関わる私たちで育てたのよ」


しかし、それを出来るのは瘴気をなくした、この『さくらの島々』だけだ。

もちろん、瘴気が溜まるように出来ている隣の魔獣島の植物には出来ない。

さくらの世界では、『昆虫』が『受粉』の手伝いをしないと実がならない。

しかし、この世界には『昆虫』がいない。

『受粉』の手伝いをしてくれる『代わりの生き物』もいない。

代わりに『一つずつ』受粉させていくのは大変だ。

そしてそれをハンドくんたちに押し付けるのは失礼な話だ。

それこそ『乙女なんかいくらでも替えがきく』と思っていた、アリステイド大陸に生きる者たちと何ら変わらない。

そのため、風で吹かれるだけで『自分で受粉』するように作り変えたのだ。

ハンドくんに頼んだのは『収穫』だけだ。

彼らは『島の管理』の一つとして請け負ってくれた。

ジャムやアップルパイなど作って出してくれたが・・・

さくらに出す前に出されたということは『毒見』だったのだろう。

それでも・・・自分たちが作った果物だ。

さくらが口にして『何かあった』らそれこそ困る。

もちろん『ハンドくんの報復』も怖いが、『他の神全員から睨まれる』のも怖い。

そして、絶対!二度とさくらには会わせてもらえない!

それを回避出来るなら、『毒見』なんて大したことではない。

それにハンドくんは『本当に食べられないもの』を出すことはない。

さくらもハンドくんも、『食べ物を無駄にしない』のだ。



「きゃー!さくら!ダメ!食べちゃダメー!!」


またさくらが果物を口にしようとしたようだ。


「ちょっと行ってくる」


ヨルクがヒナリの声がした方へ飛んでいった。


程なくして「ヨルク!さくらを止めて!」と聞こえたが、それ以上はヒナリの声は聞こえず、時々楽しそうな笑い声が聞こえてきた。







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