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第310話



「だったら、ハンドくんたちは『さくらのマンション』にも出入り出来ると言う訳か?」


ヨルクの質問に、数人の神が失笑する。

ドリトスやセルヴァンからも『呆れた目』を向けられて、「なんだよ!」とムキになる。



「ヨルク、お前・・・ハンドくんたちが『何処でご飯を作ってる』か分かっているか?」


「あ?ンなの『鉄扉(とびら)の向こう』だろ?」


「じゃあ、その『向こう』は『何処に繋がってる』か知っておるかね?」


「何処って・・・・・・・・・あれ?何処だ?」


ウーンと腕を組んで悩みだすヨルク。

衝立(目かくし)』の向こう側が気になって覗いた時に『鉄扉』があった。

直後に、ハンドくんからハリセンを受けて、セルヴァンにゲンコツを落とされて、目いっぱい叱られたが・・・



〖 『さくらのマンション』の一室です 〗

〖 そこに『台所(クッキングルーム)』を用意しました 〗


「あ?じゃあ、さくらが『おやつ』や『料理』を作りに『いなくなる』のは、そこに行ってるからか?」


〖 そうです 〗

〖 王宮の調理場を確認しましたが、『さくらには危ない』ので、使い慣れた『元の世界』のコンロや器具を使ってもらっています 〗


「オレたちがそこに入ると?」


〖 別に『死にたい』なら止めませんよ? 〗

〖 ですが、不衛生なので『自殺』なら他所(よそ)でして下さい 〗


「部屋の『清浄化』がしてあるのは、リビングと繋がっている『さくらの部屋』だけだ」


創造神の言葉に他の神々も小さく頷く。


「『ちょっと覗く』ってだけでも?」


〖 あっという間に死ねますよ 〗

〖 数秒、苦しみますが 〗

〖 『好奇心』だけで死にたいですか? 〗


「死にたくねーよ!!」


「だったら二度と『鉄扉を(くぐ)ろう』とするな」



セルヴァンの言葉に「なんでそれを知ってる!」と驚いたが〖 一度や二度ではないですよね。扉を開けている時は『結界』を張っていますけど 〗とハンドくんに指摘されると「やべぇ。バレてた」と呟く。


「お前って奴は・・・何を考えているんだ」


「結界に触れれば、張った相手に気付かれて当然じゃ」



〖 一度うっかり、『結界を張り忘れ』てみましょうか? 〗

何時(いつ)『死んでもいい』ように、『さくらへの伝言』を残してくださいね 〗

〖 さくらが『ヨルクがいなくなった』と嘆かないように 〗

〖 まあ。・・・その前に『さくらの記憶』から『完全に』消しますので、どうぞ安心してお()き下さい 〗


()けるかー!!!」


「ちょっと待って下さい。その時は『ヒナリさんも一緒』なんですよ」


「アラ?それは『大丈夫』よ」


ヨルクをトコトン揶揄(からか)って楽しんでいるハンドくんをジタンが止めようとする。

そんなジタンを、笑いながら見ていた神々が止めに入る。

いつもハンドくんに『ヨルクと同じこと』をやられている神々だったが、『自分以外』がハンドくんの『標的(ターゲット)』になっているのを楽しんでいるのだ。

・・・『明日は我が身』なのを都合よく忘れて。



「『ヒナリの記憶』も一緒に消されるか・・・」


「『さくらに魔法を編み出して』もらってヒナリを守れば大丈夫よ」


「ヒナリに『結界を張る』だけでも一応は大丈夫じゃないかしら?」


〖 残念ながら・・・『ヒナリの問題』もキレイに片付いてしまいましたね 〗

〖 では、心置きなく『()って』らっしゃい 〗


「待て待て待て待てー!!!」


いままで『さり気なく』ヒナリまで巻き込んでいたのか!


〖 ひとりでは寂しいでしょうから『心中』を勧めていたのですけど 〗

〖 残念ですが、ヒナリは『(のこ)して()く』ことになりそうですね 〗


「『字』が違う!『字』が!!」


「ヨルク。貴方は今までも、気付かないでヒナリさんを『巻き込んで』いたのを自覚していますか?」

「ハンドくんが結界を張っていなかったら、『お二人』ともすでに亡くなっていた可能性があったのですよ」


「・・・・・・へ?」


ジタンの言葉に、ようやくヨルクは『ヒナリを危険にあわせていたのが自分自身』だと気付いたようだ。

驚いた表情で周囲を見回すヨルク。

ハンドくんが何度もヒナリを『巻き込んで』話をしていたのは、すべて『自分が気付かないでヒナリにも危険にあわせていた』事実を気付かせるためだ。

それに気付いていたドリトスは苦笑し、セルヴァンは呆れたように大きなため息を吐く。

神々も「あら。やっと気付いたのね」とクスクス笑う。



「マジでオレのせい?」


〖 そんなに心配しなくても大丈夫です 〗

〖 さくらからヨルクの記憶を消す『ついで』に、ヒナリからもヨルクの記憶と存在を『キレイさっぱりスッキリすっぱり』と、跡形(あとかた)もなく徹底的に消して差し上げますから 〗


「だから何でそうなるんだよ!」


〖 ああ。そうでした。『大切なこと』を忘れていました 〗

〖 『翼族の族長一家』や『幼馴染みたち』からも、ヨルクの記憶を消さなくてはいけませんね 〗


「『消す相手』を増やすなー!!」


「でしたら、二度と『バカなこと』はしないで下さい」

「さくら様やヒナリさんを『悲しませる』気があるのでしたら、『その時』を待つ必要はありません」

「いますぐ『この場』で『トドメ』を刺してあげます」


〖 『遺体(ぬけがら)の処理』でしたら、いくらでも『方法』はあります 〗


「ちょうど運良く、さくらもヒナリも『この場』にはおらんからのう」


「『記憶を消す』のにちょうど良いな」


「待てっ!マジで待てって!」



ジタンの『静かな(いか)り』に『便乗』して、『悪ノリ』するドリトスやセルヴァンにヨルクは慌てる。

・・・ハンドくんは間違いなく『本気』だ。



「もうしない!覗いたりしないから!」


ゴメン!と手を合わせて謝罪するヨルクは、〖 何でも『いうこと』を聞きますか? 〗というハンドくんの『脅し』にアッサリ屈する。


「ハンドくん?ヨルクに『何をさせる気』かね?」


〖 大したことではないです 〗

〖 ただ、恐竜たち(彼ら)の『話し相手』が必要なので 〗


[ はなしが通じないのに? ]


[ ぼくたちの『こえ』が分かるの? ]


〖 ヨルクには『声』が分かりませんよ 〗


「じゃあどうするつもりだ?」


神に『通訳』をしてもらっていたセルヴァンには、ヨルクが『役に立つ』とは思えなかった。


〖 『声が分からない』から良いのです 〗

〖 此処は『無人島』ですから『言葉』が聞こえたらすぐに分かります 〗


「それは『犬種』である俺の方が適任ではないか?」


セルヴァンの言う通り、『犬種』は耳がいい。

しかし、引き継ぎを済ませて引退した今でも、セルヴァンやドリトスには『残務処理』が残っている。

ジタンは『国王代理』で連日忙しい。

今も、休むのが下手なジタンは『執務補佐官』に仕事を取り上げられて此処へ来た(追い出された)のだ。

さらに、戴冠式を終えて国王になれば、『いま以上』に忙しくなる。

そして・・・ヒナリには肉食恐竜たちの『食事風景』を見せられない。

必然的に『ヨルク以外』に適任者はいないのだ。



〖 ヨルク。島の珍しい植物を『調査』してみたくないですか? 〗


ハンドくんの『誘惑』にピクリと反応を見せるヨルク。

『見たことのない』植物に興味を持っているし、魔獣島は『何処よりも濃い瘴気』が集まる。

そこで『さくらの世界の植物』を育てて『瘴気の影響』を調べてみたい。

・・・それには『魔獣たちから身を守る』必要がある。

ヨルク自身は強い。

しかし『調査に集中』していたら、魔獣の襲撃に意識がいかなくて襲われる可能性が高い。

それを防ぐために、護衛(ボディガード)としてティラノたちに守ってもらう『見返り』に、『話し相手』になればいい。

恐竜たちも『意思を伝える』相手がいることで、『念話』の練習になるのだ。


〖 もちろん『言葉が聞こえない』状態では、『話し相手』は無理です 〗

〖 ですから、ヨルクは『調査に集中』出来ます 〗

〖 『声』が聞こえたら『返事』をするだけで良いのです 〗


「何か『問題』が起きたらどうなる?」

「『瘴気で狂った魔獣が集団で襲いかかってきた』とか」


〖 その時は遠慮なく『魔獣のエサ』になってくれて構いませんよ 〗


「だから『遠慮する』って!」


「そうだな。ヨルクなんか食ったら、さすがに魔獣でも『腹を壊す』な」


「そんな魔獣を恐竜たちが誤って食べてしまったら、恐竜が死んでしまいますよ」


「島には『腹下しの草』とか『解毒作用のある草』は存在しとるのかね?」


「そういえば、ないかも知れませんね」


「あとで『虫下し』と一緒に植えておきますわ」


「そうね。胃もたれなどの『薬草』も植えておきましょう」


女神たちまで『ヨルクいじり』に参戦しだしたようだ。


「オレを『毒』や『虫』と一緒にするなー!」


〖 『消毒液』や『最強の殺虫剤』を別荘に用意しましょうか 〗

〖 さくらが『バイ菌』に(けが)されては困りますから 〗


「ヨルク・・・『バイキンクン』なの?」



『別荘島』から、目を覚したさくらとヒナリが来ていたようだ。

さくらが思い浮かべたのは『可愛いキャラクター』だった。

ハンドくんは分かってて『言わなかった』ようだ。

落ち込んでしゃがみこむヨルクを横目に、セルヴァンはさくらを抱き上げる。


「よく眠れたか?」


「うん。ヒナリと一緒にいっぱい寝たよ」


「起きたらハンドくんたちから『此処にいる』と聞いて・・・」


そして、安全のために『しゃぼん玉を斜めにカットした』不思議なものに乗って、『無重力魔法』でプカプカ浮いてここまで連れてきてもらったそうだ。


「ほれ。恐竜たちが『一緒に遊ぼう』と待っておったぞ」


さくらよりもはるかに小さい『ヴェロ』たちが、首を傾げたり「グァ?」と鳴いたりしながら、セルヴァンたちの周りに集まってきていた。

ドリトスの言う通り、『言葉』が分からなくても『いいたいこと』が分かるようだ。

苦笑しながらセルヴァンがさくらを下ろすと、小型恐竜たちがさくらを囲む。

さくらが笑顔で抱きついたり撫でたりしていると、大型の『アンキロ』が近付いてきた。

ハンドくんたちがさくらをその広い背に乗せる。


「ヒナリ。さくらと一緒に行ってくれるか?」


「はい。分かりました」


さくらをひとりにしたくない。

それは誰もが、もちろんヒナリも同じ気持ちだ。

ヒナリがアンキロの上で座っているさくらのそばへ飛んで行くと、さくらが嬉しそうに両手を伸ばした。

そんなさくらをヒナリは愛しそうに抱きしめる。

「キュウ・・・」と寂しそうに鳴いた、後方に伸びたツノをもつ『パラ』に、「あとで『海』に入ろーね」と頭を撫でると返事をするように「キュルルルー」と嬉しそうに鳴いた。

アンキロは背中にヴェロたちも乗せて森の中へ、島の中心へと向かっていった。

『安全に遊べる広い場所』まで、さくらたちを運んでくれるようだ。



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