第308話
さくらは『観光旅行』に出る前に、神々が用意してくれた『恐竜島』へセルヴァンたちと一緒にやってきた。
別荘島から『陸続き』で行くことができる。
さくらは以前から望んでいた通り、『ティラノ』に『お手』や『おすわり』をしてもらって喜び、『始祖鳥』や『プテラ』と一緒に『島の上空』を何周も飛んで大喜びしていた。
いくつかの無人島も使って『巨大な円状』で作られた『内海』に放たれた『プレシオ』の長い首に抱きついたり背に乗せてもらったり、『シーラカンス』などと一緒に内海を潜って『アンモナイト』を突っついたりと大いに燥いでいた。
『アーケロン』の背に乗って『浦島太郎ごっこ』もして、海の底から『珊瑚』を持ってきた。
『イクチオ』たちは、さくらの前では完全に『イルカ』状態で、内海で同時に『ジャンプ』して見せて、さくらに大いに喜ばれていた。
そんなさくらは、恐竜たちに『ある決まりごと』を約束してもらった。
『同じ恐竜仲間を食べない』ことと『仲良くする』こと。
もちろん『肉食恐竜』の食事は『肉』だ。
その『代替』も、さくらは考えていた。
それは『鉱石から生まれる魔獣』の存在がヒントになった。
『恐竜島』へ遊びに来たさくらに影響が出ないように、神々は島の一番端に『新たな島』を繋ぎ、そちらに瘴気が集まり『鉱石から生まれる魔獣』たちが生まれやすくした。
もちろん、さくらにも捕食する恐竜たちにも『瘴気の影響』はない。
実は、恐竜が『瘴気の塊』を捕食することが『瘴気の浄化』に繋がっているのだ。
その事実に、神々より先に気付いたのはドリトスだった。
『別荘島』に移ってお昼ごはんを食べたさくらが、遊び疲れてヒナリと一緒に別荘で『お昼寝』をしていた頃、ドリトスたちは『恐竜たちの様子』を見に行った。
『この世界』に存在しない、さくらの世界でも『絶滅』しているという恐竜たちに、ドリトスたちだけでなく神々も興味があったのだ。
穏やかに草葉を食べる『ステゴ』や『トリケラ』『ブラキオ』などの『草食恐竜』たち。
ブラキオや『チノ』みたいに最大級の恐竜が『草食』に入ることを知り目を丸くした。
あの身体が『植物』だけで維持されているのが信じられなかった。
その奥にある『魔獣島』との『境界』には、『不透明の膜』が張られている。
『瘴気が漏れ出さない』ためと『魔獣が出てこられない』ように。
そして『間違って草食恐竜たちが入らない』ようにするためでもある。
『魔獣島』に入って振り向くと、『恐竜島』の様子が見えていた。
魔獣島から戻る時に『突然現れて、恐竜島の誰かをビックリさせたら可哀想』とさくらが心配したため、『透明』になっているそうだ。
そして恐竜たちは、此方から出る時は『驚く距離に誰もいないか』を確認するように言われているだ。
その『言い付け』を恐竜たちは守って、最初に『首の長い』1体が『顔』を出し、周りの安全を確認してから順番に出てくるのだ。
もしくは、『小型恐竜』が出てきて、周囲を見回してから順番に出てくる。
周りに『気が遣える』のは、『さくらの優しさ』を引き継いでいるからだろう。
それはそのまま、恐竜たちの『知能』が高いことを示唆していた。
ちなみにさくらがイメージしたのをハンドくんが魔法で『現実化』させた。
はじめは、さくらを連れてきて魔法を使ってもらおうとしたのだが、それはハンドくんに一蹴された。
〖 『強い瘴気』にさくらを近付けて、もし『具合が悪くなった』り、最悪『倒れた』りしたら、『誰』がどう『責任を取ってくれる』つもりですか? 〗
『ドス暗い』・・・瘴気よりもさらに『質の悪い』空気を纏ったハンドくんには、誰も・・・創造神ですらも太刀打ち出来なかった。
『最終確認』は、ハンドくんのこれまた『さくらのため『だけ』』に編み出した『中継』魔法を使った。
それは、安全な場所にいるさくらにタブレットやテレビ、メニュー画面などから『リアルタイム映像』をみてもらうことが出来るのだ。
テレビの『生中継』から着想を得て、ハンドくんとさくらが「試しにやったら出来ちゃった♪」らしい。
もちろん、その前に2人でアレコレと話し合ったようだが。
創造神が使えるのは『過去に起きたこと』を見せるだけだ。
以前にさくらが『元の世界』を見せてもらった時も、創造神が『事前に見てきた』風景だ。
さくらの世界の製品を知らなければ、説明しても分からない。
理解出来なければ『新しい魔法』は使えない。
そのために、これは『2人だけ』の限定魔法となった。
魔獣島へ入った『一行』は、そこで、魔獣を捕食している『肉食恐竜』たちを見て言葉を失った。
そして、さくらが『他の恐竜たちの捕食を禁じた『理由』』と、『草食恐竜たちから見えないようにした『理由』』を一瞬で理解した。
たとえそれが『正しい』としても、恐竜島には・・・『さくらの島』には『相応しくない』。
「恐竜島から魔獣島が『見えない』ように出来る?」
あとね。ティラノたちが『魔獣島』から出る時に、『浄化魔法でキレイ』になってから『恐竜島』に戻れるように出来る?
そうさくらが『お願い』した時は、誰一人として『言葉の意味』を深く考えていなかったのだ。
せいぜい『瘴気を持ち込まないため』と考えただけだ。
・・・誰もが『肉食獣の食事風景』を甘く見ていたのだ。
その驚きの中でも、ドリトスだけが『島の瘴気が薄くなっていく』事に気が付いた。
神々ですら、『自分たちがいるために浄化されているのだろう』と思っていたのだ。
しかしドリトスの『目』は、恐竜たちが魔獣を『鉱石』に戻していく時に『清浄化』させている事に気が付いた。
その指摘に神々は驚き、誰もが恐竜たちの『口』を注意して見ていると、魔獣を捕食する度にキラキラと煌めき、『鉱石』を吐き出していた。
ドリトスの言う通り『清浄化』させていたのだ。
「・・・・・・マジかよ」
ヨルクの呟きに、セルヴァンとジタンが頷いて同意する。
鉱石に瘴気が溜まって魔石になる。
その魔石に瘴気が溜まって『魔物や魔獣が生まれる』。
それは『鉱石』によって変わる。
この島には『強い魔物が生まれる鉱石』が豊富な無人島らしい。
それとは別に、野生動物に瘴気が溜まって『魔獣化』するタイプもある。
それが、誰もが知ってる『この世界の理』だ。
動物から『魔獣化』した場合は、倒せば瘴気は凝固されて『魔石化』するため、元の動物に戻る。
それを解体すれば『魔獣肉』が得られるが、瘴気は消えているため『影響なく』食すことができる。
魔石から生まれた魔獣は、倒せば『魔獣肉と魔石』が残る。
そして、こちらの場合は時々『レアアイテムやレア武器』が残される。
例えば『鉄の盾』を体内に入れたまま長年過ごし、倒されたら『プラチナの盾』が出来ていることもあるのだ。
それは『元の鉱石』の影響があるからだと言われている。
この島の魔獣は『鉱石から生まれる』タイプなのだ。
そのため、残されるのは『魔石』のはずだ。
しかし恐竜たちは『魔獣を浄化して『鉱石に』戻している』。
つまり、恐竜たちは口に入れた『魔石の浄化』すらしているのだ。
「まさかと思うけど・・・」
恐竜たちは『さくらの魔力』で生まれた。
そして、さくらは『瘴気の浄化』が出来る能力を持っている。
「彼らはさくら様の『瘴気の浄化』能力を持って生まれた可能性があるってことですか!」
ヨルクの『思いついたこと』に気付いて、確認のため言葉にするジタン。
ヨルクは恐竜たちから目を離さずに頷く。
しかし、ドリトスは『それ以外』にも気付いたことがあった。
彼ら恐竜たちは『自分たちを襲ってきた魔獣』だけを捕食しているのだ。
すぐそばに同じ魔獣がいても、逃げ惑う魔獣がいても。
そして『捕食する相手』も、一撃で仕留めている。
魔獣や野生動物のように『嬲り殺す』こともしていない。
特に『ティラノ』は、一撃で仕留めた魔獣をそのままにして『次の魔獣』を仕留めに行く。
倒した魔獣は、『ユタ』や『ケラト』、『アウカ』、『ディロン』などの『小柄な肉食恐竜』、『プテラ』や『アーケオ』たち翼竜が分け合っていた。
すべての恐竜たちが魔獣を捕食しているのを確認すると、『ティラノ』は最後に倒した魔獣を自分で捕食しだした。




