表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/449

第30話




王都外壁のさらに西。

何もない荒れ地に、コーティリーン国の飛空船が黒く焼け焦げて地に堕ちていた。

これだけの被害なのに乗員に死者はいない。

あれが『神の怒り』だった証明だ。

そして皆『天罰』を受けていた。

彼らは地面を転がり回り「火が消えない」と言っている。

さくら様の仰った、父レイソルたちの受けている『見えない(いばら)』ではない。


「さくら様に見て頂けると、天罰の種類も分かるのでしょうが・・・」


先ほどの様子から、さくら様に見て頂くことは出来ない。

空を見上げるが、さくら様の姿はそこにはなかった。


「ジタン様」


騎士の一人が声をかけてきた。

父がジタンと同年代の貴族の子息を集めて『学友』としたうちの1人だ。

彼も、ヒナリやヨルクと遊んだことがある一人だ。


「ヨルクたちが、さくら様を王城へ無事にお連れ致しました」


「そうですか。・・・無事で良かった」



さくら様に最後にお会いしたのは2ヶ月以上も前。

密偵の騒動の時だ。

その後高熱で50日も寝込まれていたさくら様は、今なお長くはベッドから離れられないと聞く。


そんなさくら様が飛空船に興味を持たれていたのは、ドリトス様とセルヴァン様からお聞きして知っていた。

外には出られないけど王城から見たいと仰られていることを知り、屋上庭園から見て頂くことにした。

いずれは王室専用の飛空船にお乗せしたいと思っている。

国内の空を一周するだけでもいい。

望まれるなら、セルヴァン様のセリスロウ国でもドリトス様のヒアリム国でも、その両国にお連れしても構わない。

きっとさくら様は「どちらも行きたい!」と仰られるでしょう。




屋上庭園はガラス張りだから、翼族からはよく見える。

そこに偶然ヨルクたちがさくら様とお会いして、少しでも近くから見せようとしたのも『問題はない』だろう。

実際に飛空船からは、かなり離れた場所を飛んでいたのだから。


しかし・・・

3人は前触れもなく攻撃を受けた。

もし航路を妨害しているなら、警告音を鳴らし、それでも退かなければ『威嚇』もありえただろう。

しかしコーティリーン国の飛空船は、3人を狙って撃っていた。


「今すぐ神殿に人を送って下さい!」


これは『誰を狙った』のか、神々ならご存知でしょう。

そうでなくても、一時的に天罰を止めていただかなくては。

彼らをこの場に放置して、魔物の餌食にするわけにはいかない。


そしてコーティリーン国と交渉しなくては。

さくら様の仰られる通り、エルフ族が瘴気に弱いのなら、今は外交官を寄越すべきではない。


「ジタン様。もしこの者たちが翼族ではなく『さくら様を狙った』のでしたら、王城に攻撃が向けられていた可能性も御座います」


「なぜさくら様が狙われるのです?さくら様は『聖なる乙女』ではないのに」


「ですが『神の加護』を受けておられます。さくら様を手に入れられれば、自分も加護を受けられると思う(やから)は少なからず存在しております」



もし『神の加護』を受けたいなら、さくら様を攻撃するべきではない。

実際に父たちは『礼を欠いた』ために『天罰』を受けている。

『神の怒り』に触れたエルハイゼン国は、厚い雲に覆われて陽がささなくなって3ヶ月が過ぎた。

このままでは食物(しょくもつ)は実らない。

昨年が豊作だったため、国庫を開ければ今年は(しの)げる。

しかし、来年も『神の怒り』が続くようなら・・・


「ジタン様。今は『先のこと』より『目の前の問題』を一つずつ片付けましょう」


「・・・そうですね」



まずは出来ることから。

『さくら様を見習う』

そう決めたのだから。



それでもダメなら、さくら様に叱られましょう。

きっと、さくら様は厳しくても良案を授けて下さるでしょうから。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ