第296話
この町に来てから、さくらは何度か『少女の姿』で町に出かけようとしたが、そのたびに何故かハンドくんに止められた。
『性犯罪の被害者にするつもりはありません』
・・・でもハンドくんが一緒じゃん。
『良いのですか?目の前に立つ『相手の首』が胴体からポロリと落ちても』
『頭だけ一瞬で『消滅』するかも知れませんよ?』
・・・怖いからやめて。
ホラーは嫌いなんだよ。
『レーザーで焼けば血は出ませんね』
そーゆー問題じゃないから!
『では『少女の姿』で出掛けるのは『や・め・て・く・だ・さ・い』ね♪』
えーん・・・
ハンドくんがイジメるー。
『・・・では安全が確保出来ないので『冒険旅行は強制終了』にしましょうか?』
それはヤダー!
『では『どうします』か?』
・・・『少年の姿』でガマンするー。
ハンドくんは、渋々納得するさくらの頭を撫でる。
そして『聞き分けのいい『良い子にはごほうび』ですよ』とプリンを出してもらったさくらは、笑顔で食べてから少年の姿で出掛けるのだった。
もちろん『無人島』などの『安全な場所』では『もとの姿』でも『少女の姿』でも、ハンドくんは文句を言わなかった。
さくらは少年の姿で露店巡りを楽しんでいた。
ハンドくんから『銅貨』をたくさん貰っているので『使い放題』なのだが、露店では『買い食い』をする気も『買い漁り』する気にもならなかった。
部屋に帰れば『美味しいおやつ』が待ってるし、宿の料理も美味しかった。
それに『今すぐ食べられる物』より、野菜や果実などの『生鮮食料品』や麻などの『反物』の方が多く売られていた。
王都に近くなるほど『買い食い出来る露店』が増えていくらしい。
それでも『露店街が持つ独特の雰囲気』に触れているだけで楽しかったのだ。
だから全然気付かなかった。
背後から近寄る不穏な空気に・・・




