第293話
副隊長は放置して、少女たちのもとへ戻る。
そしてさっきみたいにベッドの端まで行って床に座る。
「話は聞こえたかな?」
そう聞くと頷く。
その表情は戸惑っているようだ。
「首輪・・・本当に外せるの?」
「ああ。外せる」
猫種の少女の言葉にチカラ強く頷く。
断言するだけでも、彼女たちの不安を少しでも軽くできるのだから。
少女たちはお互いに顔を見合わせているが、その表情には不安よりも安堵感の方が強かった。
「しかし、その後は色々と話を聞かれることになる。言いたくないこともあるだろう。それでも『大事なこと』なんだ。どんな小さなことでもいい。すべて話してくれるか?」
「いいよ!」
猫種の少女が頷くと隣にいた犬種の少女たちも首を縦に振る。
それと同時に「そうか!『闇魔法』で掛けられたから『光魔法』を使えばいいのか!」と副隊長が叫ぶ。
どうやら、無事に『正解』までたどり着けたようだ。
しかし「アレ?あれ?」と周囲を見回している副隊長の姿が滑稽で、見ていたさくらはベッドを叩いて笑う。
それにつられるように、少女たちもクスクスと笑い出す。
小さな2人はさくらをマネてベッドを叩いて笑っていたが、そのうちベッドの上に寝転がりバタバタと足をバタつかせて楽しそうにお腹を抱えて笑いだした。
年相応に燥ぐその様子に副隊長も思わず口元を緩めた。
若い隊員は『神官長』を連れて戻ってきた。
「オイオイ」と思いつつ説明のため扉まで歩み寄ったが、「この神殿内で『光魔法が使えて一番信用できる方』をお連れしました!」と胸を張って言われたら何も言えなかった。
それは副隊長も同様だったらしい。
しかし若い隊員はちゃんと『説明』はしていたようだ。
年配の優しそうな目をした『神官長』は「首輪を見せて頂けるかしら?」と3人に近寄る。
「いいよー」と言いながら、真っ先に猫種の少女が神官長の前に駆け寄る。
神官長は首輪の鍵となる『魔石』に手を当てて『光魔法』で『解錠』を試みる。
『解錠』に使う魔法は簡単な魔法でいい。
『同種の魔法』か『相反する魔法』をあてることで鍵は開くのだ。
神官長は魔石に光の『回復魔法』を掛ける。
するとパーンッという音と共に魔石は砕け散り、少女の首からスルリと首輪が落ちた。




