第291話
「ハア?『失敗』した?」
「あ、あの・・・『失敗』ではなく『正規の方法』では開けられなかったと言いましょうか・・・」
翌朝、顔を出した警備隊の詰所で『少女たちの首輪が外せなかったこと』を知った。
「なあ。一度その首輪を見せてもらってもいいか?」
『隷属の首輪でない』のなら、さくらが『カギ』に触れるだけで外せる可能性がある。
『構造』が分かれば、同じような首輪が流通したとしても『何とかなる』だろう。
副隊長も何の手立てもなく困っていたのだ。
今まで『目の前の少年』に何度も助けられてきた。
恥を忍んで少年に助けてもらおう。
少しでも何か手掛かりでも見つかれば、あの少女たちを助けられる。
いつの間にか『犯罪被害者』である少女たちを助ける方が、自分たちの『威厳』より重要になっていた。
副隊長に案内されて、町の中央からやや北にある神殿に初めて足を踏み入れた。
エルハイゼン国では『神殿』なんて用はなかったからね。
『神なんて呼ばなくてもリビングに湧いていましたからね』
・・・ハンドくん。なんか言葉に『トゲ』があるよ?
『気のせいです』
ハンドくんは『神さま』きらい?
『いいえ。中には『尻を叩かないと仕事をしない』神がいますから』
・・・だれだろ?
《某所にて》
ハックション!
くしゃん!
「あら?お二人ともお風邪ですか?」
「エルハイゼンはまだ寒いですものね」
「さくらのいる大陸は一年中『温暖』で過ごしやすいみたいだな」
「・・・行きたいけど『ハンドくん』がねぇ」
「あの『鋼鉄のハリセン』は受けたくないですわ」
「そういえば・・・さくらがここにいた頃はよくハリセンで叩かれてましたね」
「・・・・・・思い出させないで下さい」
「同じく」
ねえ。ハンドくん。
此処にも『天罰を受けた状態で生まれて保護されている人』っているのかな?
『いますよ。地下に30人ほど』
・・・結構いっぱいいるんだ。
『近隣の村で生まれた人も此処に集められますから』
「どうぞ。此方です」
前を歩いていた副隊長が目の前にある部屋の扉をノックする。
中から警備隊員が扉を開けてくれた。
そして副隊長と一緒にいるさくらを見て無言で敬礼する。
そんな警備隊員にペコリと頭を下げて室内に入る。




