第29話
「お主ら!無事じゃったか!」
心配したぞ!とドリトスがヨルクたちに声をかける。
セルヴァンはヨルクからさくらを受け取る。
「セルヴァン様。ドリトス様。申し訳ございません」
ヒナリが2人に頭を下げて謝罪する。
「謝ることはない。2人はさくらを命懸けて守ろうとした。それは俺もドリトスも分かっている。2人共、よくさくらを守って連れ帰ってくれた」
セルヴァンの労いの言葉にヒナリは張ってた気が緩み、大粒の涙をこぼす。
ヨルクはさくらから目を離せなかった。
さくらはずっと、目をキツく閉じて小さく震え続けていた。
セルヴァンが揺り椅子に座り、膝に乗せたさくらを落ち着かせている姿を見ている。
「雛はもう・・・オレたちを怖がるようになるのか?」
「お主らは、せっかく出会えた『雛』を諦めるのかね?」
「私・・・諦めたくない」
「オレだって!」
「それだったら大丈夫じゃ」
ドリトスに励まされて2人は気持ちが落ち着く。
そして思い出した。
「私たち、何が起きたか分からないの」
「『王城へ戻れ』って頭に声が響いて『ああ。戻らなきゃ』って。『雛を守らなきゃ』って思ったんだ」
「私も。同じ声が聞こえて。震えているさくらを見たら『戻らなきゃ』って」
「そうか。そうか」
ドリトスはさくらに目を向けて細める。
さくらは落ち着いて来たようで、セルヴァンに笑顔を向けて何か楽しそうに話している。
「ホレ。ここでクヨクヨ悩んでいても、何も始まらんぞ」
ドリトスは背の高い2人の背を押し、さくらとセルヴァンのもとへと連れて行った。