第288話
「楽しそうでしたね」
「ああ。『ハンドくんが一緒』だからな」
ジタンとヨルクは『笑顔のさくら』が見られて嬉しそうだ。
ヨルクはハンドくんに図書室で『冒険旅行』の話を聞いた時から『さくらが泣いていたら、どんなに遠くても飛んでいく』と心に決めていた。
しかし、さくらの冒険に必要と思われる『準備』をしてて気が付いた。
ドリトス様もセルヴァンも。そしてジタンでさえも『さくらを信じている』ことを。
さくらは、どんなに辛いことに直面しても必ず立ち上がり、真っ直ぐ前を向いて歩けると信じていることを。
『親鳥なら雛を信じろ』
さくらが『日射病』で倒れた時にセルヴァンに言われた言葉だ。
・・・オレはさくらを『本当の意味』で信じていなかった。
そしてセルヴァンに聞いた。
「『さくらを信じる』ってなんだ?」と。
セルヴァンは驚いていた。
でも「さくらがすること、したいことを『見守る』ことだ」と教えてくれた。
オレには難しい・・・
しかし「『準備をしっかりして送り出す』のも見守ること」だと言われて、自分で出来る範囲の準備をセルヴァンと一緒にした。
上着に思いつく様々な『付与』を手当り次第つけていた時に、創造神から『着用者の周りの空気だけ清浄化させる』魔法を教わった。
時間が掛かったが、それでも取得する事ができた。
セルヴァンの方が先に魔法を取得出来たのが悔しかったが・・・
あとから『清浄化』魔法を知ったドリトス様が、数時間で取得した上、3日後には『無詠唱』で使えるようになっていた。
ドリトス様の場合、今は使える魔法のすべてが『無詠唱』だ。
さくらに「構造が分かれば無詠唱でも魔法が使えるんだよ」と教えられたが、ヨルクには難しかった。
さくらが『冒険旅行』に行ってから、ドリトス様はセルヴァンと共に魔法の構造を研究している。
生活魔法や治癒・回復魔法など無詠唱で早く使える方が良いものを選んでいるらしい。




