第281話
今はまだ『保護観察中』の少女たち。
彼女たちは神殿で保護されている。
彼女たちには『犯罪の被害者』という疑いが出ていた。
神殿で『賞罰』を調べたが、賞罰欄は『まっさら』で、『奴隷』に落とされる理由は皆無だったのだ。
今はまだ『隷属の首輪』を外せないため、それ以上のことは調べられない。
ただ、この町に一番近い町にいた奴隷商人を町に呼んでおり、数日後には到着するらしい。
その商人が『正式な手続き』をして、少女たちの『隷属の首輪』を外すそうだ。
それが昨夕に宿へ『経過報告』に来た警備隊長の言葉だった。
そのため、以前にハンドくんがしてくれた話をした。
それを聞いた隊長は考えに没頭し始めた。
確かにジョルトの賞罰欄には『殺人』が表示されている。
それが『奴隷を殺してついたもの』とまで考えが至らなかった。
それ以前に『目の前の少年』の指摘通りだ。
『新しい奴隷』は『何処から来た』のか。
ジョルトはこの町から一歩も出ていない。
そして調べた結果、このひと月は奴隷が町に入った記録はないのだ。
元々『大陸の端』にあるこの町にいる奴隷は『ジョルトの屋敷』だけのはずだ。
その屋敷も『他の住民よりはひと回り大きい』程度で、奴隷がたくさん必要ではない。
主人であるジョルトの逮捕により、奴隷たちは保護されたが彼らは3人しかいなかったのだ。
「貴重な情報をありがとう御座います」
隊長は残っていたお酒をグイッと飲み干すと、深々と頭を下げて酒場を出て行った。
「オイオイ。警備隊長が『飲み逃げ』かよ」
宿屋のオッチャンが苦笑する。
「いいさ。オレが払うよ」
さくらが笑いながら自分の酒代と一緒に払う。
最初は『ツケにするからいい』と言ってたオッチャンだったが「オレが仕事を押し付けたようなものだから、その手間賃みたいなもんだ」とさくらに言われて隊長の酒代をさくらの代金に上乗せした。
さくらに会いに来た隊長が宿屋のオッチャンに『そのこと』を聞かされて慌てたのは数日後のことだった。




