第28話
「あー。下にジタンがいる」
発着場に近くなると、出迎えに出てたジタンを見つけた。
「ジタンとは子供の頃からの付き合いなのよ」
「一緒に空をとんでたんだぜ」
ジタンも私たちに気付いて驚いていたが、私が手を振ると笑顔で手を振り返してくれた。
「ほら。近くでみるとスゴいだろ」
「うん。ホントにスゴく大きいね~。2人共、連れてきてくれてありがとう!」
2人にそうお礼を言っていたら、「危ない!」って声と共にヒナリが飛びついてきた。
その場から大きく離れた私たちだったけど、さっきまでいた場所を光が通り過ぎた。
「魔法か!」
ヨルクが声をあげたのと、下から「さくら様!!!」とジタンの叫び声が聞こえた。
飛空船から『火の玉』がスゴいスピードでコチラヘ飛んでくるのを目にして「いやぁぁぁ!」と叫んだのと、ヨルクが私を庇うように火の玉に背を向けて、ヒナリが前から私とヨルクを抱きしめたのが同時だった。
「さくら様!」
飛空船から放たれた光だったが、ヒナリのおかげでヨルクとさくら様にケガはなかった。
「ジタン様。失礼ですが翼族が抱えている女性は?」
共にいる者から声をかけられて、一瞬彼に目を向ける。
「『女神に愛されし娘』です!」
「なんと!」
「コーティリーン国は何を考えている!」
すぐにヨルクたちに降りるよう声を掛けようとして上を見たジタンは、飛空船から火球が発射されるのをみてしまった。
「さくら様!!!」
「いやぁぁぁ!」
さくら様の悲鳴が響く。
そんなさくら様を守るように、ヨルクたちが抱きしめあう。
あれは翼族が生命をかけて『雛』を守る姿。
火球が3人に接近し飲み込もうとした。
しかし火球は3人に届くことなく、まるで弾かれるように飛空船に戻っていく。
それも火球は何倍。いや何十倍にも大きく膨れあがって。
地上からでは、白い光に包まれて身動きひとつしない3人を助けることも出来ず、ただ見てるだけしか出来なかった。
会ったばかりにも関わらず、自分たちに向けられた『悪意』に巻き込んでしまった『雛』を守って、死ぬ覚悟をしたヨルクとヒナリ。
しかし火球の衝撃波が襲ってくることはなかった。
ヒナリが、次いでヨルクが目を開けて周囲を見回し、同時に飛空船の方を向く。
そこに浮いていた飛空船はなく、王都の外で激しく燃え上がる『何か』が見えた。
『王城へ戻れ』
アタマに響いた男性の声。
ヒナリはさくらに目を向ける。
ヨルクも目線を下ろしたが、さくらは小さく震えていた。
「戻ろう。セルヴァン様と約束したよね」
「ああ。『何かあればすぐ戻れ』って言われたもんな」
きっと離れた場所から見ていただろう。
そして心配している。
「今は『雛を守る』のが優先だ」
下にいるはずのジタンを探したが、すぐに見つけられなかった。
しかし何人か見たことのある人物たちが2人に気付いたため、ヒナリが王城を指差す。
手をあげて合図を貰った2人は、顔を見合わせて頷くと王城へ飛んでいった。




