第270話
「なんだ!キサマは!オレ様は『銀板』なんだぞ!」
「だから?」
冷たく言い放つさくらにジョルトは目を見開く。
「オレも『銀板』なんだけど?」
そう言いながら自分の身分証を取り出す。
それと同時に、最前列に陣取っていた『ジョルトの身内』たちがジョルトの前へ一斉に投げ出された。
他の人には透明になって見えないハンドくんたちに『ポポポイのポ〜イ』とされたのだ。
「警備隊員さんたち。悪いんだけど『コイツら全員』捕らえてくれない?」
さくらの言葉に、騒動を遠巻きに見てた警備隊員たちが広場の中央に雪崩込み、一斉に取り押さえていく。
警備隊員の1人がさくらの前に出てきてお辞儀をする。
昨日さくらと一緒に『大捕物』をした『隊長さん』だった。
「キサマら!オレ様は『銀板』なんだぞ!」
今すぐ離せ!というジョルトの言葉に警備隊員は誰も耳を貸さなかった。
昨日の『ザーニの店』やその周囲で起きた『犯罪奴隷大量出荷』の一番の功労者である『ヒナルク』からの『お願い』なのだ。
そして再び『犯罪奴隷大量出荷』の可能性があるのだ。
ちなみに犯罪奴隷を奴隷商人に売り渡した代金は『警備隊』に『功労金』として均等に分けられる。
前回のように『警備隊以外の協力者』がいた場合、その協力者の功績によって『協力金』が渡される。
さくらの場合、『事件解決』と共に『犯罪の暴露』や『捕り逃した者の捕縛』など多岐にわたり『一番の功労者』と警備隊員の誰もが認めていたのだ。
「昨日ぶりです」
「はい。あの後、捕り逃した者たちも夜の内にすべて捕縛出来たため、関係者全員の罪状と罰を確定することが出来ました」
御協力感謝します。と再度頭を下げる隊長さん。
どうやらハンドくんたちが捕らえて詰所前に投げ出したのが『ヒナルクのおかげ』だと思っているようだ。
この警備隊長は、さくらに『全幅の信頼』を寄せているようで「他に指示はございますか?」と聞いてきた。
だけど「ジョルトの身分証はニセモノだ」と教えられたら、さすがに目を丸くした。
しかし、すぐにジョルトの衣服や所持品を検めて身分証を見つけ出した。
そして、身分証を地面に置いて躊躇う事なく銃で撃った。
パーンッという乾いた音が広場に響く。
それと同時に『証明』された犯罪。
さくらの指摘通り、地面にあるのは割れた銅板に銀を纏わせて『銀板』に見せていた『ニセモノ』だった。
『犯罪は暴かれた』のだった。




