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第27話



さくらがベッドから出られるようになったのと、ようやくアストラムの後任が決まったのは、ほぼ同時期だった。

ベッドから出られるようになったと言ってもまだ体力は戻っておらず、セルヴァンがさくらを右腕に抱えて左手で身体を支えて歩いている。

今は王宮内から王都の端にある飛空船の発着場が見える場所まで移動中。

エルハイゼン国とエルフ族の国《コーティリーン国》は離れているため、飛空船で行き来するらしい。


そして今日、後任のエルフが到着するそうだ。

その『帰りの飛空船』で、アストラムは故郷に帰る。

アリスティアラたちの話だと、ハンドくんたちが、私が撮った写真を拡大して、アストラムがいる牢の壁一面に貼りまくってくれていたそうだ。

アストラムは『泣いて喜んでくれていた』と、ハンドくんが教えてくれた。

だったら、もっと撮ってあげれば良かったな〜。

ちなみに、ジタンから話を聞いていたドリトスやセルヴァンにも、ハンドくんが『貼った写真』を見せたら、2人とも顔を引き()らせながら笑ってた。

ジタンは『国王代理』で発着場に出迎えに行っている。

あの『天罰騒動』前の『見えない(イバラ)でチクチク&ザクザク』以降、レイソルとマクニカは『仕事放棄』してるから、その『しわ寄せ』がジタンに被さっているそうだ。

私はエルフより『飛空船』に興味があるだけ。

強化ガラス張りの屋上庭園から、飛空船が小さく見える。


「私の世界の『飛行船』と形が(おんな)じだー」


でもあれって魔石で動くんでしょ?

すっごいなー。

なんてはしゃいでいたら、目の前に顔が2つ現れた。

一つは上下逆になってる。


「キャアッ!」


思わずセルヴァンにしがみついて顔を胸に(うず)める。

背中をさすられて、固まり震えていた身体が少しずつ(やわ)らいでいく。

セルヴァンの『モフモフ』で動悸が落ち着いてきた。


やはりモフモフは最強です。



「コラ!『ヨルク』!『ヒナリ』!」


「2人共。こちらへ来てさくら殿に挨拶しなさい」


窓ガラスが開けられて、ドリトスに促された2人が屋上庭園に入ってきた。

2人ともセルヴァンの腕にいる私と目の高さが近い。

180位かな?

いいなー。背が高くて。

・・・一応160あるのに、ドリトス以外の周りの人も神様も、みんな背が高いんだもん。





「オレはヨルク」


「私はヒナリよ。貴女がウワサの『女神に愛されし娘』?」


「ウワサ?」


ウワサってなんだろう?

っていうより、この人たち背中に羽根がある。

2人が『有翼人種』とか『翼族(よくぞく)』って種族の人たち?




種族:翼族(鳥人)

職種:ヒナリの比翼

名前:ヨルク

年齢:23

レベル:15




種族:翼族(鳥人)

職種:ヨルクの比翼

名前:ヒナリ

年齢:23

レベル:14




『鑑定』では2人はお互いの『比翼』となってた。

夫婦?まだ恋人かな?


『翼族は80歳で成人です。2人は成人前ですから、まだ恋人ですね』


アリスティアラの解説が入る。

成人が80歳って『子供時代』が長いんだねー。

ねぇねぇ。

この世界でも『比翼連理』っていうの?

『比翼の鳥』『連理の枝』って。


『この世界ではあまり知られていませんが・・・』


あら残念。

私の世界の『神話』ではよくある話なのに。



「なあなあ。何見てたんだ?」


「え・・・と。『飛空船』を」


「こんな遠くで?」


「さくら殿は長く()せっておられたんじゃ。まだ外の人混みには出られん」


「なんだ、お前。身体、弱いんか?」


私は曖昧な表情になってたと思う。

「身体が弱い」って言葉、久しぶりに言われたよ。

ヨルクは私に興味を持っているようで、質問責めなんだけど・・・


「こんな所から見るより近くで見ようぜ」


「『人混み』がダメでも『空から』なら良いでしょ?」


「空をとぶのは気持ちいいぞー」


「・・・落っことしたりしない?」


「しねーよ」


「私もいます。族長様。よろしいでしょうか?」


ヒナリがセルヴァンに許可をもらってる。

そういえばセルヴァンは獣人族の『族長』だっけ。

ドリトスもドワーフ族の部族長だ。

2人共『偉いひと』なんだな。

・・・今更だけど。



「・・・何かあればすぐ戻れ」


セルヴァンの許可が出て、私はヨルクに『お姫さま抱っこ』された。

体躯(たいく)の良いセルヴァンと違って、ヨルクは長身痩躯(ちょうしんそうく)だから、抱かれてても『安心』より落とされないか『心配』の方が大きかった。

でもヨルクって筋肉があるのか腕のチカラが強いのか、私を抱えてもふらつかずに安定していた。



「さくら殿が少しでも具合が悪くなったら、すぐ戻るんじゃよ」


「はい。分かりました」


ドリトスにヒナリが返事をする。


「行ってくるね」


「楽しんでおいで」


2人に手を振る。

ヨルクが背中の羽根を動かしたらフワリと浮いた。


「大丈夫か?怖くねーか?」


ウンと頷くと「なんかあれば言えよ」と言って屋上庭園から外へ出る。

気をつけて飛んでくれているのか、全然怖いと思わない。

「大丈夫?」とヒナリも心配してくれる。


・・・ヘンだなー。幼少時のトラウマで『人の姿が見える高さが怖い』のに。

飛行機みたいな高さとか、『ジェットコースターの最初以外』だと逆に怖くないんだけど。

2人がいるから『怖くない』のかな?

もしもの時は、ハンドくんたちが助けてくれるって思っているからかな?



「なあ。そういえば名前」


「ゴメンね。ヨルクが質問責めにしてたから言えなかったでしょ」


ヒナリに「オレのせいかよ」と言うが「そうよ」と即答されてヨルクは黙る。

自分でも質問責めにしたのは自覚してるようだ。

クスクス笑ってると「名前」ってヨルクから再度促された。


「私は『さくら』だよ。よろしくね」


ところで『ウワサの』って言ってたけど・・・ウワサってなあに?


「ああ。それはアレだ」


「厳しいことで有名な獣人族の族長様が、『可愛がっている』ってウワサになってるのよ」


「オレたちは獣人族の『マヌイトア』に住んでるんだ。だからウワサを聞いて見に来たんだ」


『マヌイトア』って集落とかコロニーのことだっけ。

それにしても、セルヴァンが私を可愛がってるだけで獣人族ではウワサになるんだ。


「そっか・・・私、セルヴァンや獣人族の人たちに迷惑掛けてるのかな?」


「「全然!」」


ヨルクとヒナリが声をそろえて否定する。

・・・なんで?


「セルヴァンなんか『鬼』と呼ばれるくらい『情け容赦ない』族長なんだぜ。それを『目に入れても痛くないくらい可愛がっている』なんて『見物(みもの)』じゃないか」


「・・・わたし、『見世物』?」


「さくらじゃないわ。セルヴァン様よ」


・・・セルヴァンが『鬼』なんて、私にはイメージ出来ないよ。



「2人は何か『楽しそう』だね」


私が不思議そうに2人を見ると、2人はお互いに顔を見合わせて笑った。

・・・私、おかしなこと言ったかな?


「今まではね、私たちって『乙女』から怖がられるから近付けなかったのよ」


「それをこうやって抱き上げて、一緒に空を飛べるなんて思いもしなかった」


「私たちって、獣人族やドワーフ族以外とはあまり仲が良くないの」


だから嬉しくって、とヒナリが笑う。

召喚される乙女が西洋人だったら、『天使』と間違えられて涙を流して喜ばれただろうね。



「『ヒナ』はオレたちが怖いか?」


『怖いか?』の質問に首を横に振ってから「ヒナ?」と聞き返す。


「さくらのことよ」


「オレたちは『守る相手』をヒナと呼ぶ」


ああ。『(ヒナ)』か。


「私は2人の『雛』?」


「イヤか」


「ううん。ありがとう」


お礼を言ったら2人は嬉しそうに笑ってくれた。




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