第266話
広場に着くと沢山の人集りが出来ていた。
どの顔も嫌そうにしている。
鑑定魔法で、前列にいる数名が『ジョルトの身内』と表示されている。
『この場合の『身内』は『仲間』という意味ですね』
ギャングやマフィアの『ファミリー』みたいな意味合いかな。
『そうですね』
広場の中心にある噴水前でニヤニヤしながら集まってくる人たちを見ている男が『ジョルト』だった。
『賞罰欄』に『偽造』『詐欺』『殺人』などが表示されている。
それなのに『捕まらない』の?
なぜ?
『『銀板』だと信じられていますから』
『この町の中にいれば『鑑定』を受ける必要はありませんから』
そっか。
『入る時』に鑑定を受けるけど、中にいる間は鑑定を受けることが無いもんね。
・・・あれ?じゃあどうやって『中』に入ったんだろ?
偽造品で入れば何か表示されたよね?
『それに。毎回奴隷をどうやって増やしているのでしょうね』
ハンドくんが『意味深』なことを言う。
・・・どういうこと?
『忘れましたか?』
『この町には『奴隷市場』はないのですよ?』
普通に誰か『身内』が『買ってきた』?
私の疑問にハンドくんが説明してくれた。
この世界では『身分証』がすべてだ。
もちろん『奴隷購入や譲渡』も身分証で身元確認される。
奴隷市場では、その身分証の所持者が『奴隷の主人』と手続きされる。
譲渡にも『身分証』が使われる。
そして『奴隷商人』の許可証を持つ者しか『譲渡の手続き』が出来ない。
・・・その許可証を持ってる人、『此処』には1人もいないよ?
そして『主人』が奴隷を酷使したり折檻した結果に死なせても『殺人』はつかない。
でも・・・このジョルトには『殺人』がついているよね。
『『彼女たち』は何処から『連れてこられた』のでしょうね』
ハンドくんの言葉と共に、人々がザワついた。
最後列にいるさくらは『引き出される奴隷たち』が現れたことに『鑑定魔法』で気付く。
奴隷は獣人の少女3人だった。
2人がまだ10歳、1人が15歳。
ねえ。ハンドくん・・・
『ええ。そのようですね』
鑑定に表示されたのは15歳と10歳の『犬種』2人と10歳の『猫種』1人。
さらに神の加護により『特別仕様』になっているさくらの『鑑定魔法』以外では、決して表示されない彼女たちの『経歴』には『アリステイド大陸獣人族』とあり、さらに犬種2人たちには『前・族長妻』『前・族長娘』とあった。
・・・セルヴァンの『亡くなった妻子』が転生した姿だった。




