第244話
気付いたら、前の方に『富裕層』っぽい男性が歩いている。
『鑑定』で『危険信号』を発動してるのは、こちらへ走って来る少年たちだ。
5人の少年のうち、4番目の少年が富裕層の横を通り過ぎる時に財布をスって、持っていたカゴの中に突っ込んだ。
同時に『おいで』魔法発動。
ゲームでよくある『引き寄せ』という魔法のアレンジだ。
軽いと『なくなった』ことに気付かれる可能性があるから、ハンドくんが拾ってくれた『拳大の石』と交換した。
・・・これを『等価交換』っていうんだっけ?
少年たちは手前の路地で曲がって行ったから、私とは直接接触がない。
周囲を見回しながらMAPでも確認すると、見張りをしてたらしい彼らの仲間も走っているのかその場から結構早いスピードで遠ざかっていく。
「おーい。前を歩く『丸いオッチャン』」
「あ?ワシのことかね?」
・・・自分が『丸い』って自覚してるんだ。
財布を見せて「こいつ落としたんじゃないか?」って聞いたら、服をアチコチ触りながら「ない!」と慌てだす。
そりゃそうだろう。
私が手に持っているんだから。
同じものが懐にあったら、それこそビックリだ。
ちなみに大声を出した訳では無い。
『内緒話』魔法だ。
これなら『少年少女スリ合掌団』にバレないからね。
スられた本人が「ない!」って騒ぐのも、落としたと思って『来た道を戻る』のもよくあること。
立ち止まっている私の元へ慌てて駆け寄ってくるオッチャンを待つことに。
コロコロ〜って転がった方が早くないかい?
少年たちの逃げ込んだ路地を通り過ぎて、こちらへ来る。
どうやら少年たちは少しでも遠くへ逃げることに夢中なようで、スった財布が無くなっていることに気付かずにドンドン離れていく。
「いやー!ありがとう!ありがとう!」
そう言って、財布ごと私の両手を握ってブンブン上下に振りながら喜ぶ串団子・・・もといオッチャン。
頭・胸・腹が『三段の串団子』に似てるんだ。
イメージしたら、お腹すいた。
「しかしなんでワシの財布だと分かった?」
二人組の警備隊員たちが近くで聞き耳立ててるよ。
私が盗んだと思ってるのか?
「周り見てみろよ」
「こんな『分厚い財布』持っててもおかしくないのってオッチャン位なもんだろ?」
「・・・たしかに」
私の言葉に、オッチャンは周りを見回して納得する。
「お礼をさせてくれ!」と言われたが、まだ露店巡りを始めたばかりだ。
めんどくさいから「もう落とすなよ」と言って断った。
「そこらに警備隊員たちがいるんじゃないか?」
「さっきも数人とすれ違ったし」
「どうせなら、彼らに『警備』してもらって帰ればイイんじゃね?」
そう言ったら、警備隊員たちが寄ってきて「お送りします」と言っていた。
やっぱり聞き耳立ててたか。




