第243話
酒場にいたオッチャンたちの話だと、つい先日も行商人仲間の仕入先がそれに巻き込まれて、家族を含めた従業員全員が『犯罪奴隷』に落とされたばかりらしい。
社長一家が奴隷落ちから免れたのは故に『銀板持ち』だったからだ。
それだけ『銅板』と『銀板』の立場には差がある。
だいたい『銅板』の存在自体が、もう一般人を見下しているのだ。
『銅板』を持つのは一般人だけではない。
奴隷も『銅板所有者』だ。
この世界では一般人と奴隷は『イコール』なのだ。
この露天商はどうせ初めて見た顔だから『銅板』だと思い込んだのだろうな。
・・・人を『見かけ』だけで判断しちゃあアカンよ。
「仕事終わってからでいいから、『銅貨5枚』分を『銀馬亭』のオレの部屋まで配達しといてくれ」
「はい!分かりました!」
あーら。いいお返事だこと。
こういう『配達』の場合、大抵は宿屋が『立て替える』そうだ。
宿屋が支払いを渋ったら、その時はずっと待っているらしい。
『前払い』にすると、金だけとって品物は配達しないこともあって、こういうシステムになったようだ。
私が不在の時に配達に来たら、ハンドくんが部屋のカギを開けてくれるらしい。
露天商から羊皮紙の『注文書』を受け取り、露店の冷やかしを再開した。




