第241話
「らっしゃい!」
ここは酒場付きの宿屋らしい。
まだ昼前なのに1階の酒場は賑やかだった。
カウンターに向かい「門番のジグから紹介されたんだけど部屋はあるかい?」と聞いたらヒナリくらいの女性から「空いてるよー。一泊銅貨2枚。朝夕の美味い食事付きだ」と言われた。
ここの娘かな?
身分証の銀板を取り出して宿泊日数に制限がないのを確認する。
「とりあえず・・・15日でお願い出来るかな?」
「あいよ。じゃあ銀貨3枚か銅貨30枚な」
「銅貨で払った方が良さそうだな」
「そうしてくれると助かる」
酒場なら釣り銭がいるだろうからね。
銅貨を30枚、アイテムボックスから取り出して支払う。
「はい丁度。じゃあ上の突き当たりな」
「どうも」
カギを受け取り階段を上がっていく。
奥の部屋を受け取ったカギで開けると二部屋分はある広さの部屋だった。
一応『銀板宿泊者用』として『銅板宿泊者』の個室よりちょっとだけ広く豪華にしているんだろう。
「ハンドくん。部屋の調査よろしく」
サッと部屋中を調べてくれたハンドくんたちが『グッドサイン』を見せるのに1分もかからなかった。
とりあえずベッドで仰向けに寝転がる。
『少し硬めのマットレス』だった。
みんなには一応『夢の中』で挨拶をして来たけど・・・
やっぱりヒナリに泣かれたのがイタイ。
「帰ったら、いっぱい怒られるんだろうな〜」
・・・そして、いっぱい泣かれるかも。
旅立ち初日なのに、気持ちが重くなった。
ハンドくんが慰めるように頭を撫でてくれた。
エルハイゼンにいた頃は、いつも誰かが頭を撫でてくれたっけ。
・・・さっそく『ホームシック』だよ。
「ありがとう。ハンドくん」
うん。
こういう気分の時は『ショッピング』だな。




