第24話
セルヴァンに身体を支えられて薬を飲んでからは、何処ぞかの国の政治家みたいに「全く記憶に御座いません」状態。
意識朦朧の中でも、朧気に体内の浄化をしてもらっていた事と、セルヴァンとドリトスが見舞いに来てた事は感じてる。
意識をハッキリ持って目を覚ました時は、部屋の中には『風の女神』と『水の女神』がいた。
私に涼しい風を送りつつ湿度の調整をして、私の身体が脱水症状にならないよう注意してくれていたらしい。
「具合はいかがですか?」
「ダル重~」
そう話しながら、ハンドくんたちに体温計を挟まれたり、汗を拭かれたり、一人では動けない位に体力の落ちた身体を世話してもらっていた。
体温は『まだ39度に近いぞ。こんちくしょう』だった。
ハンドくんが『冷えたレモン水』を持ってきてくれた。
それなのに飲ませてくれない。
・・・どんな放置プレイですか?
わたしの首は、待ってても『ろくろっ首』みたいに伸びませんよー。
そうグズってたら、部屋の扉が開いてセルヴァンが姿を見せた。
私が目を開けているのを見てそのままフリーズ。
「セ、ル~?」
微妙にかすれた声でセルヴァンの名を呼ぶ。
「さくら!」と私の名を呼んで駆け寄ってきたセルヴァンは、「もう大丈夫か?」「苦しくないか?」と聞きながら私の頭を何度も撫でる。
そうしたら、ハンドくんがやっとレモン水を持ってきてくれた。
のどカラカラだよー。
私の目線に気付いたセルヴァンが、身体を起こしてくれて背もたれになってくれた。
手をなんとか上げる事は出来たけど、ダルくて重くてグラスは持てない。
ハンドくんが、ちゃんと加減をわかって飲ませてくれるから両手は下ろした。
『吸うチカラ』もないからストローも使えない・・・
ひと口飲むと冷たい水分が身体を巡る気がして、レモン水は結局『おかわり』もして2杯飲んだ。
セルヴァンが静かなのがちょっと心配だったけど、私が飲み終わると寝かせてくれた。
「おお。目を覚ましたか」と声がしたけど、セルヴァンで姿が見えない。
「ドリぃ・・・?」
近寄ってきたドリトスの姿がセルヴァンの背後から見えると、ホッと安心した。
「具合はどうじゃ?」
「もう大丈夫」
「さくらの『大丈夫』は信用出来ない」
「えー」
セルヴァンの言葉にドリトスも頷く。
小さい頃から微熱は『いつも』だし、高熱を出して寝込むことも割と多くあったから、今回だって私には『大したことではない』し『よくあること』なんだけど・・・
そう言ったら2人が心配そうに見てきた。
・・・熱ぐらい、本当に『大したことではない』と思うんだけどなー?
大人しく寝てれば、そのうち下がるもん。
それより『悪意の塊』を私に向けられたせいで、身体が弱くなった方が問題なんだけど・・・
『悪意ほど危険なものはありませんからね』
その悪意を通じて『呪殺』を狙ってきたんだよね。
・・・これが『乙女』に向けられたとしたらゾッとする。
『何言ってるのですか!』
『そのせいで貴女の身体は・・・!』
心臓や肺の機能が弱くなったけど。
でも『死ななかった』でしょ?
少しずつでも、完全じゃなくてもいいから『回復』出来るのかな?
ステータスを確認したら『体力』自体に増減はなし。
ただし『ステータス異常:呪い』になっている。
そのせいで弱ってるのは分かった。
『呪い』が解けても、すぐに全回復しないらしい。
『弱った身体を急激に戻すのは、身体に負荷が掛かりすぎる』そうだ。
RPGみたいに教会に行って、お布施という名で金子を分捕られて・・・
『ゲームのし過ぎ』
じゃあどうやって『呪い』を解除するの?
『呪いをかけた本人が死ぬとか』
『呪いを跳ね返す『魔具』を使うとか』
『呪いを吸い取る『魔具』を使うとか』
『聖なる乙女が『呪いの浄化』をするとか』
あれ?『聖なる乙女』が浄化出来るなら私は?
『出来ますよ』
『でも今はダメですよ』
えー!なんでー?
『熱で体力が落ちているでしょう?』
『せめてその分だけでも回復させないと、ね?』
『はやく『人間』になりたーい』と妖怪アニメのセリフをいったら、『人間じゃなかったらなんですか?』って言うから「寝子」って返したら笑われちゃった。
だけど『猫』は『寝子』とも言うんだよ?




