第238話
「本当にキミたちには驚かされる」
突然男性の声がしてジタンは現れた男性の姿に驚く。
「ジタン。この世界の『創造神』だ」
ヨルクの言葉にジタンは胸に手を当てて頭を下げる。
ジタンは何度か神々と会ったことはあるが、創造神とは初対面だったのだ。
その姿に頷いた創造神は、全員を隣の部屋へと移動させる。
座卓には『手袋をしていないハンドくん』が待っていた。
「さくらはキミたちの世話のためにハンドくんたちを残した」
それはつまり『ここへ戻ってくる』ことを意味しているのだ。
そしてハンドくんはテレビのリモコンをパチパチと弄ると、荒野の中にある城壁に向かって歩く『茶髪の少年』の後ろ姿が映った。
それはドリトスでなくても分かった。
「「さくら!」」
ヨルクとヒナリが声を揃えてテレビに呼びかけた。
すると2人の声が聞こえたのだろうか。
『さくら』が立ち止まり後ろを振り向く。
そして、そのまま振り仰いだ。
じっとこちらを見たさくらの目には『決意』が浮かんでいる。
さくらはそのまま城壁に目を戻すと再び歩き出した。
映像はそこで途切れた。
「キミたちが心配するだろうから『時々』見られるようになっている」
「ありがとうございます。それだけで十分です」
ヒナリがまっすぐな目で創造神を見る。
「さくらは『自分の選んだ道』を歩き出したのです。だから私たちは『自分たちの出来ること』をしながらさくらの帰りを待ちます。さくらが帰ってきた時に恥ずかしくないように。胸を張ってさくらに『おかえり』と言えるように」
ヒナリの『決意』に誰もが頷く。
その様子に創造神は「さすがだな」と関心する。
以前はさくらが2時間『外出』しただけで取り乱したヒナリだったが、今は『いつ帰るか分からない』さくらを待つという。
それも『自分の出来ること』をしながら。
「では『いいこと』を教えよう」
これはさくらの使う身分証を作る際に『どんな名前にするのか』聞いた時の言葉だ。
「名前?だったら『ヒナルク』で。だって、私はヒナリとヨルクの『子供』だもん。だから2人から名前を貰っていつも守ってもらうの」




