第235話
戴冠式のパーティーが滞りなく終わったのは、日付が変わってからだった。
神の館へ戻ってきたドリトスたちが見たのは、愛用の抱き枕を抱きしめてぐっすりと眠っているさくらの姿だった。
『はじめてのパーティー』で疲れたのだろう。
さくらの周りには結界が張られており『起こさないように』とハンドくんに注意され、全員が了承すると結界が解除された。
「まったく。もう。さくらったら」
ヒナリが眠るさくらの頭を撫でる。
さくらが『少年』に姿を変えてパーティーに忍び込んでいたことを知ったのは、さくらがジタンに挨拶を終えてヨルクたちと別れてからだ。
シリアを見つけてヨルクたちのいるであろう場所に連れて戻った時に、父親から「さっきの『少年』はさくら様ではないのか?」と聞かれたのだ。
ロントが「え?マジかよ」と青ざめていたから『さくらに何かした』のだろう。
ヨルクが「後で何倍にもして返してやる」と脅していた。
・・・私もその時は一緒に『仕返し』をしよう。
さらに、パーティーの途中で挨拶を交わしたカトレイアたちから、少年姿のさくらがセルヴァンの所へ来ていたことも聞いた。
・・・気付いていなかったアムネリアが「え!あの『人族の子供』が?!」と驚いていたが。
武人の心得もあるセルヴァンが『背後の気配』に気付かないハズがない。
子供たちでさえ、脅かそうと背後から近寄っても「何をしている」と気付かれたのだ。
ヨルクも気配を殺して近付いては『返り討ち』にあっている。
唯一セルヴァンに背後から抱きつけるのは『さくらだけ』だ。
そして瞬時に醸し出された『穏やかな気配』。
それだけで、彼らは少年が『さくら様』だと気付いたのだ。




