第221話
「ねえ『湯たんぽ』のポケット版って作れないかな?」
『たしかありますよ』
『ですが湯たんぽでは『低温やけど』をしてしまいますよ』
『それに小さい分、冷めやすくなります』
「ペットボトルの小さいやつにお湯を入れて、冷めてきたら『火魔法』で温めるのはどう?」
お湯だから『火魔法』と『水魔法』のコンビネーションかなー?
『温度』だから『空気魔法』かな?
さくらの言葉に周囲は「この世界に『空気魔法』はないぞ」と思ったが、さくらがマグカップを両手で持ち『魔力を流し込む』と、マグカップの中の紅茶から湯気が出始めた。
それをハンドくんが『飲むときに火傷をしますよ』と手を翳して温度を下げる。
『アイテムボックスの『保温機能』を魔法で使えるように考えてみましょう』
『ペットボトルに『保温機能』をつけても良いでしょうね』
ハンドくんがさくらの頭を撫でると、さくらは頷いて適温になったマグカップの紅茶を飲みだす。
「さくら様。先ほどの魔法は?」
ジタンがさくらに尋ねると「紅茶の中に含まれている空気を振動させて温度を上げてみたの」と何でもないように答える。
空気を振動させたら温度を上げられるか試したら出来たとのこと。
それを聞いて、ヨルクとヒナリ、そしてジタンまで魔法を試そうとしたのは言うまでもない。
もちろん直後にハンドくんに『失敗して暴発したらどうする気ですか!』と叱られてハリセンを受けた。
ちなみにセルヴァンとドリトスが後で試してみたところ無詠唱で使えたのだった。
「構造が分かれば無詠唱でも魔法が使えるんだよ」というさくらの話は本当だった。
さくらはジタンから、今まで『王城』だったこの建物が『神の館』と名を変えて、主にさくらや『世話役』の4人、そして時々ジタンが過ごすことになったことを聞いて驚いた。
此処へは他の誰も入ることは出来ない『神聖な場所』になったのだ。
温室や庭園も『神の館』同様『神聖な場所』となり、『神の結界』が張られて誰も入ることが出来ないのだ。
その結果、神々もここで自由に過ごせるようになった。
そのために『誰もいない』のだ。
ちなみに『親衛隊』は神の結界の外で警備をする。
外からは建物は見えるが『中の様子』は見えない。
逆に、中からは『外の風景』が見えるが、結界の近くにいる人や声は届かない。
いま神々が不在なのは『別の理由』があるが、その事をさくらを含めて誰も知らなかった。




