第203話
「シルバラート殿」
国際会議が終わると鱗族の代表『リンカスタ』がシルバラートに声をかけてきた。
セリスロウ国にある湖が海と地底湖で繋がっているらしく鱗族はよく国に来ており、代表であるリンカスタもよく王城に来ていた。
何より彼女の存在は母を早く亡くした自分たちにとって『母親同様』だった。
シルバラートは拳を握った右手を胸に当てて腰を折る『この大陸式の挨拶』をしようとしたが「そんな風に畏まらないで」と止められた。
「リン!お久しぶりです!」
補佐として控えていたアムネリアがリンカスタに駆け寄る。
「アムネリア殿は変わらず元気ですね」
そう言って微笑むリンカスタ。
「アムネリア。『此処』は『セリスロウ国』ではないよ」
そう。此処は『エルハイゼン国』だ。
自国と同じ感覚でいてはいけない。
自分たちは『国の代表』として此処にいるのだから。
シルバラートに注意されると、以前に同様の理由で父を激怒させてボコボコに殴られたことを思い出し、喜びで紅潮してた顔が一瞬で真っ青になった。
「アラアラ。セルヴァン殿に『厳しく叱られた』のね」
そんなアムネリアの様子を笑って見ていたリンカスタ。
その笑顔のままシルバラートに目を戻す。
「シルバラート殿。最近、セルヴァン殿と直接お会いされまして?」
「はい。先日のパーティーが最後ですが」
「私はお会いすることも出来なかったわ」
「父は『天花』が始まってすぐに王城へ戻られましたから」
リンカスタはシルバラートの返事に不快な表情を見せる。
『お披露目』の時は他の賓客とは違う、『一段高い場所』に父たちは列席していたのだ。
そのため自分たちも父と直接会えたのはパーティー会場に出てからだ。
そして自分たちも姉カトレイアと弟ソルビトールがセリスロウ国内の現状を伝え、父に「よく国の安寧に努めている」と誉められた時に『天花』があがり、父は王城へと戻ってしまったため話は出来なかった。
そうシルバラートが話しても不快な表情は変わらない。
「いいわ。セルヴァン殿とお会いすることがあったら前もって教えてくださるかしら?」
「はい!」
元気よく返事するアムネリア。
リンカスタはそんなアムネリアの頭を優しく撫でて「カワイイ子ね。楽しみに待っているわ」と迎賓館へ戻っていった。




