第20話
「んー。・・・ヒマ」
ただ待ってんのも飽きた。
つまんない。
『天罰騒動』以降、各国の混乱・・・というか、「何が起きてるの?ワクワク」感が強くて、相変わらず私は放ったらかし状態。
「ワクワクしてるのは貴女だけですよ」
少し険しい表情のアリスティアラ。
『神の怒り』は、下手したら世界の終わりに結び付くからねー。
ただ、その『当事者』である創造神は・・・
「これは美味いなー」
乾麺を茹でて、パウチに入ったソースを温めてかけただけのパスタを喜んで食べている。
「いやー。いつも『見てるだけ』だったから、一度食べてみたかったんだよな~」
ありゃりゃ・・・女神様の表情がさらに険しくなっちゃったよ。
「ねぇ。ハンドくんと一緒に『城内探検』に行って来てもいい?」
ここに来てから、殆ど『引きこもり』だよー。
お城から出ないからさー。
神様たちから「ジャマになるから」って、部屋から出してもらえないし。
「危ないですから「それなら『案内役』を呼べばいいだろ?」・・・」
アリスティアラの言葉を遮って、男神の一人が口を挟む。
それでも、しばらくは畳の上でゴロゴロ転がってたら「ソロソロだな」と言われた。
ハンドくんがリビングから応接室へ向かうと、廊下に通じるドアがノックされた。
「我々はここにいるから行っておいで」
「はーい。行ってきまーす」
神々に手を振られて、いつもと違う雰囲気に首を傾げながら隣の応接室に向かう。
廊下にはドリトスとセルヴァン、そしてジタンがいた。
「どうしたの?」
「国内の混乱を理由に、さくら様にはご不自由をお掛けしてしまい・・・」
ジタンが鎧を着ているくらい堅苦しい言い回しを聞いているのが面倒になり、ドリトスに目を向ける。
「つまりじゃな。『仕事に飽きたから逃げてきた』」
「『ヒマなら城内を案内するぞ』と言うことだ」
「ドリトス様!セルヴァン様!お二方ともさくら様になんて口のきき方を・・・」
だから、ジタンの堅苦しい様子が鬱陶しいんだってば。
「エ~ン。ジタンが『仲間外れ』にする~」とドリトスに抱きつくと「え?さくら様?」と慌てだすジタン。
「ヨシヨシ。可哀相にのう」
ドリトスは、私の背中を撫でながら「ジタンは『悪いヤツ』じゃのう」とノってくる。
セルヴァンも私の頭頂部を撫でて「賓客に対して・・・」と、こちらはちょっと怒ってる。
「え?え?すみません、さくら様。そんなつもりは・・・」
ジタンが必死に言い訳しようとするのを見て、顔を見合わせる私たち3人。
そして同時に吹き出した。
「あー。おかしー」
「面白いものを見た」
「真面目な者をからかうのも、たまには良いものじゃ」
「クセになりそう!」
「いや。さくらはもうクセになってる」
私たちの様子を目を丸くしてみているジタンに、「さくらに堅苦しい言葉を使うからじゃ」とドリトスが指摘する。
「ですが!」とジタンが言ったと同時に、ジタンの後ろにハリセンが現れて、スッパーンといい音を響かせた。
「え?ハンドくん?」
「い・・・イタい・・・」
私が呼んでもないのに、ハリセン片手に現れた『左手のハンドくん』。
「どうしたの?そのハリセン」
私が魔法で出す『ハリセン』より小さい。
『作ったみたいよ』
部屋に残ってるハンドくんがホワイトボードに解答したのを、私に伝えてくれている。
そういえば、カレンダーを欲しがったからあげたっけ。
この世界では、もう使えないものだったし。
『1人1個持ってるみたい』
「どんどん『出来ること』が増えるね~」
『『もっと『出来ること』を増やして、みんなで『守ってあげる』』ですって』
『愛されてるなー』
「ありがと〜」
さくらの様子を男性陣3人は黙って見守っていた。
セルヴァンとドリトスは笑顔で。
ジタンは後頭部を押さえて涙目のまま、驚きの表情で。
「なんと言っとるかな?」
「もっと強くなって、みんなで私のことを守るんだって」
「いまも十分強いけどな」
「・・・まだイタい」
後頭部を痛がるジタンをスルーして、私たちは『城内探検』に出発した。
応接室や謁見室、パーティーで使われる広い部屋や図書室。
やはり王城なだけあって『広くて大きい!』。
そして私は、セルヴァンに抱えられている。
この世界に来て早々に『細胞変化』のために高熱で寝込み、たくさんの『ケセラン・パサラン』の浄化で無理をして倒れて寝込み、『天罰騒動』による国内外の混乱で部屋から出られず。
完全に『体力不足』。
そんな私に、セルヴァンがいち早く気付いた。
当たり前のように抱えられて探検続行。
ドリトスも私の体調を気遣って、ティータイムを取ってくれた。
そしてKYなジタン君は「もう休憩を取るのですか?」と言ってしまい、Wハンドくんに『お手製ハリセン攻撃Part2(攻撃力2倍)』をお見舞いされた・・・
ドリトスが、休憩場所に選んでくれたのは温室。
様々な花が咲いていて目の保養。
匂いもキツくなく、『フラワーブーケ』のように柔らかな香りでまとまりがあった。
そして、ハンドくんたちが、お茶とサンドウィッチを持って現れた。
ドリトスには番茶。セルヴァンには甘めのココア。
そしてジタンは・・・
「なんで、僕を追い回すんですかー!イタいですってー!」
・・・『ハリセン』を貰ってた。




