第2話
アリステイドには人族以外にも様々な種族が存在している。
エルフ族やドワーフ族、獣人族と翼族。そして鱗族と魔族。
人族は二分されており、乙女が召喚されるのはエルハイゼン国。
賢王と呼ばれた始祖王が興した国で、他種族との交流を良しとする穏健派。
もう一つはアグラマニュイ国。
同じ人族であるエルハイゼン国との交流以外は、極力行わない閉鎖的な国。
賢王より五代後に起きた『事件』により、他種族との交流を嫌った僭王が興した国。
ちなみに『賢王』と『僭王』は『諡』だそうだ。
「あの・・・『諡』って分かりますか?」
「『生前の行いの評価から死後に贈られる名前』・・・中国で有名なのは『武帝』かな?隋を滅ぼすキッカケになった『煬帝』は『悪い意味』で有名。唐の『太宗』に歴史を改竄されて暴君に誇張されたって説もある」
別に私は『歴女』ではない。
ただ、読んでいた本やテレビ番組で得た知識なだけだ。
それでもアリスティアラは感心してくれた。
そしてこの世界でも『諡』は同じ意味らしい。
しかし、現在では『諡』を付けることはなくなったそうだ。
エルフ族はコーティリーン国。
長寿で平均寿命は600歳。
名前から『可愛い妖精』をイメージしたが、エルフ族は長寿を活かして科学や研究で発展した国だそうだ。
実はコーティリーン国は、『国』ではなく『国家機関』の総称らしい。
以前は国だったのだが『事件』があり、その時に国自体は滅んでいるとのこと。
ドワーフ族の国はヒアリム国といい、私たちの世界のドワーフとイメージが近いようだ。
石工だけでなく、鍛冶やアクセサリー工芸など、手先の細かい作業も得意としている。
工芸品は交易で他国へ輸出されているが、結構な値段らしい。
獣人族はセリスロウ国。
動物の姿と人に近い姿を使いこなしている種族らしい。
動物の姿として多いのは犬や猫に近く、次いでクマやトラなどの力強い生き物。
もちろん牛や馬などの『家畜』もいるが『野生動物』もいるらしい。
・・・私は獣人族と区別出来るのかな?
翼族は有翼人種と言われる、背中に翼を持つ種族。
鳥人が大半だが、気まぐれで楽しいことが何より大好き。
そのため国は作らず『マヌイトア』と呼ばれるコロニーを各国に作り、自由に空を飛び回っている。
族長はエレアルという名の鳥人で、セリスロウ国のマヌイトアに住んでいる。
鱗族の姿は人間に近く、虹色に煌めくウロコを身に纏っている。
鱗族の国は海にある島だが、国としての名前は持っていない。
湖や池に『海の道』が通っていればどこへでも行き来が出来るらしく、山の中の湖に現れたこともあるそうだ。
半魚人とか河童とかイメージして「すっぽんぽん?」と聞いたら、古代ギリシャのようなピラピラした衣装に近いそうだ。
鳥人と鱗族の問題行動として、「気に入った相手の都合を聞かない」事が挙げられる。
鳥人は一緒に空を飛んで遊ぶため。
鱗族は自分たちの島へ招待するため。
どちらも「自分が楽しければそれでいい」という種族との事。
そして魔族に関しては、アリステイドではあまり分かっていない。
アリスティアラは知っているが、アリステイドの人々が知らない事を私に教えることは出来ないらしい。
今現在アリステイドで分かっているのは
・知性は他種族と同等。
・海を挟んだ先にある大陸に住んでいる。
・建国以来、海を越えて侵略する気はない。
・鱗族の島とは友好な交流をしている。
「私が自分の世界に帰られない以上、その世界で生きていくしかないのですね?」
アリステイドの世界を説明してもらい、もう一度確認する。
「はい」と言われて、私は交渉をすることにした。