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第193話



「あれほど穏やかな表情の父上を見たのは初めてだ」


獣人族専用の執務室に設置されている応接室セット。

そのソファーに座ったソルビトールは昨夜みた(セルヴァン)の顔を思い出す。

自分たちの前では決して見せたことのない表情はヨルクの腕の中・・・たぶん『さくら様』に向けられていたのだろう。


「母上がまだ生きてた頃に、どうして母上は父上と結婚したのか聞いたことがあるわ」


五人の中で最年長の長女カトレイアの言葉に弟妹は視線を集中させる。


「母上は何と?」


末っ子のアムネリアが興味津々な表情で姉に先を促す。

その様子に他の兄姉が苦笑する。


「母上が仰るには『誰よりも愛情深い方だから』って。でも今まではその言葉を信じていなかったの。だって父上は『鬼族長』で有名だったもの」


そうなのだ。

この大陸ではセルヴァンの名前を知らなくても『獣人族の鬼族長』と聞いただけで恐れ(おのの)く。

そして『ドワーフ族のドリトス様』と共に恐れられる存在と認識されているのだ。

そのドリトス様も父同様、さくら様のお側に仕えるために部族長を辞められた。

それを聞いて、事情を知らない誰もが「さくら様はお二人がお世話しないといけないほど『困った(どうしようもない)性格』なのか」とウワサされたくらいだ。



「・・・でもね。昨日の父上の表情を見て分かったわ。父上はさくら様のそばだと『本当の父上』でいられるのね」


それは同じく『すべてを投げ捨ててさくら様を選ばれた』ドリトス様や幼馴染みのヒナリやヨルクにも言えることなのだろう。

そして自分たちでは父に穏やかな表情も笑顔もさせられないことが哀しかった。

此処で父に教育を受けているシルバラートたちは、逆に父を激怒させてしまった。

そんな父を落ち着かせたのは『さくら様の存在と御言葉』だ。

それも難しい言葉ではない。

ただひと言「早く帰ってきてね」。

それだけだ。


でもその『ひと言』が父にはどんな言葉よりも『大切』なのだろう。


ヒナリの弟たち(ロントとシリア)は『自分達が先に会っていたら『さくら様とお近付き』になれていた』と思っていたようだ。

しかしそれは無理だろう。

あの2人では近付く事も出来なかったハズだ。


・・・そう。さくら様の側にいられるのは『自分勝手』な考えを主張する者ではないだろう。





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