第19話
2人と言うか主にドリトス主体で、応接室を出てからの話を色々としてもらった。
『乙女の魔石』を持った2人は、まずジタンが向かったであろう治療院へ向かった。
治療師たちは自分の状態を判断して、状態回復の魔法を各々で掛けて、一応は回復していたらしい。
さすが治療師だ。
ジタンには、私が話した『起きる可能性の話』を伝えたそうだ。
ジタンも他国へ連絡を取ることを失念してたらしい。
治療院の長に王宮内外の回復の指揮を頼み、3人は『通信室』へ向かった。
最初に、一番状態異常に耐性があるドワーフの国《ヒアリム国》に通信した。
やはり被害は軽い目眩や耳鳴り位で、通信にはすぐに出たらしい。
「創造神の怒りを買った者がいる」「状態異常の回復魔法で症状が軽くなる」「動物や魔物たちの暴走の可能性」などの事情を伝えて、直ぐに対応するよう伝えた。
ドワーフには『ドワーフ独自のネットワーク』があり、国同士の連絡が『電話』なら、ネットワークは『無線』や『連絡網』に近いらしい。
ネットワークに使う魔石も『魔物の魔石』と、使い勝手が良いらしい。
悪用されないように、国外ではドワーフたちの村や工房でしか使えないらしい。
これで各地に散らばるドワーフたちに連絡がとれて、こちらは何とかなりそうとのこと。
問題は各国のほう。
アストラムのせいだと伝えたら『エルフ族全員』が叩かれる。
かといって誤魔化す事も出来ない。
エルフの国《コーティリーン国》には、数日前からのアストラムの態度を伝えて『アストラムのせい』と伝えたらしい。
どうやら、外交官は交代になるようだ。
・・・せっかく写真撮ったのに。
『餞別』代わりに、国内外にバラまいてやろうかしら。
『安心しろ』
『各国の神殿には、この国の王たちが『我らに愛されし娘』に対して繰り返し無礼を働き、エルフが創造神の怒りを買った、と伝えてるぞ』
ちょっと、それって・・・
「ねぇ。各国にはちゃんと話した?ウソ吐いてない?」
神々が神殿に直接伝えたって。
もし誤魔化していたら、エルハイゼン国の立場は悪くなる。
慌てて聞いたらドリトスに「大丈夫だ」と言われた。
「ジタンはちゃんと『女神に愛されし娘』に対して繰り返し無礼を働いた者たちがおり、その者たちは、天罰を受けている」
「それでも反省しなかったため『創造神様』の逆鱗に触れた、と伝えておったぞ」
やっぱりジタンはイイコだ。
『譲位はまだ早いぞ』
でもさー。
国王が急死したら未熟でも王になるよね?
『そして『バカ王』となり天罰を食らってる』
えぇ!!あのバカは未熟で王になったの!
『放っといても、あと2年で交代させる予定だ』
『その後は天罰と仲良く隠居だ』
『良かったじゃないか。宰相という天罰仲間がいるんだから』
神殿で隠居?
『いいや。王族や王政に関わった者は、懸案塔に入れられる』
『王城の四方にあるんだよ』
『以前は王都の四方にあったんだよな』
『王都を『守護させる』という理由で』
じゃあ。なぜ王城内に?
『何度か『事件』があってな』
家族を殺された者が『復讐』のため襲ったり。
家族が『天罰』から救うために殺しに行ったり。
『もちろん、その人たちは『天罰』を受けるわ』
『そいつらは『神殿行き』だがな』
塔では何してるの?
ただ『ぐうたら』と無駄飯食って、だらだらと『生かされてる』だけ?
言い方変えよっか。
・・・軟禁とか監禁とか?
『朝から晩まで機織りとか』
それって、前に話してくれた『生まれながら天罰を持った者』の一生と同じじゃん。
『そりゃあ』
『『『天罰だから!』』』
『働かざる者食うべからず』って慣用句を『身をもって体験中』ってことなんだ。
じゃあ。あの『頷KING』アストラムは?
『・・・いい渾名を付けたな』
『エルフは寿命が長いからな~』
『あのエルフは残り300年位だっけ?』
『エルフ族は自分たちを『神の僕』と自負してるからな。その分、天罰はどの種族より『不名誉』だ』
・・・・・・『不名誉』なら自殺しないの?
『アストラムに『そんな度胸』があると思うか?』
なさそ~。
あったら逆にビックリだわ。
『でしょ?』
『アレの『同類』だぞ』
『連中に『根性』も『度胸』もあると思うか?』
『だいたい、『天罰』は自殺しても逃れられない』
『『次の生』で一生償い続けることになる』
『その時は『罰が増えている』わよ』
『だって『天罰から逃げるために死を選んだ』んだもの』
『『罪を償わないで逃げる』なんて赦されるわけないわ』
『残りの寿命で罪を1回償いますか?』。それとも『次の一生をすべて使って償いますか?』ってことか。
『『残りの300年で罪を償いますか?』。それとも『転生する度に罪を償いますか?』だな』
『罰が『追加』されているからな』
『ひとつの『生』で償えるのは、天罰の『どれか1つ』だからな』
その処罰って、アストラム自身も知ってるんだよね?
『子供の頃から何度も聞かされているだろう』
『エルフ族の場合、天罰を受けた者は、地下迷宮の牢獄に閉じ込められる』
『運良く天罰が許されても、恥じて人前に出て来ないな』
『それにあの迷宮内では魔法は一切使えない。そして少しずつ魔力を奪い続ける』
『ただひたすら『死を待つのみ』だ』
それでもアストラムは懲りなかったんだ。
・・・バカだな。
『バカだよなー』
『大バカだよなー』
ところで・・・
エルフ族が『神の僕』って・・・それって本当なの?
『違う』
『違うわね』
『気のせいだ』
『ただの『騙り(カタリ)』だ』
それって・・・・・・サギじゃん。
『自分たちが長寿だから『勘違い』してるだけだ』
あーあ。
私が持ってる『妖精』イメージが崩壊されたわ。
・・・そりゃあ。マンガとかの『創作世界』と現実世界は違うけどさー。
『貴女のイメージする『妖精』なら、あのエルフとは種族とは違いますよ』
『『神の隣人』は、彼らと違う種族よね』
神の隣人?
『・・・ああ。彼らならキミの『イメージ』に合ってるかもしれないな』
『彼らは『寿命を持っていない』からな』
『もし、この世界に貴女の想像してる『妖精像』に合った存在がいなかったら』
『貴女が望むなら『召喚生物』を生み出す事も可能ですよ』
ハンドくんみたいに?
『そうそう』
『小さい妖精』でも『聖霊の類』でも?
『貴女はここで『好きにして良い』のよ』
『貴女が望むなら『ペット』も召喚生物として生み出せるわ』
『なにより、貴女は『ネットショップ』が使えるでしょ?』
じゃあ動物をネットで『『『買っちゃダメ!』』』・・・あれ?
『だから『図鑑を買いなさい』って事よ』
『忘れたの?』
『『聖なる乙女』以外は、この世界で生きられないのよ』
・・・忘れてた。
私も、何日も高熱出して寝込んだんだっけ。
『図鑑を買ったら、絵に魔力を送りなさい』
『いくらでも『生み出す』事が出来るわよ』
じゃあ恐竜も!
『『召喚生物』だということを忘れないで下さいね』
肉食の恐竜や動物に、私がガブリと・・・
『ないな』
『ありませんね』
『ハンドくんを見れば分かるでしょう?』
『主には従順です』
ティラノに『お手』や『お座り』も?
『出来ますよ』
させたい!
『はいはい。まずは『楽しい環境づくり』を頑張ってからね』
はーい!
『ごほうび』目指して張り切りま~す。
右手をピンッとあげたら、ハンドくんがクッキーを渡してきた。
「どうした?」
「ありがとー」と言いながらクッキーを頬張ると、隣からセルヴァンが声をかけてきた。
「神々と話してたのかね?」
「うん。『ごほうび』の話してた」
ドリトスには、しっかりバレてる様子だね。
「ごほうび?」
「うん。『ふるさとの動物たち』を『召喚生物』として呼び出せるようになるんだって」
「それは良かったのう」
「うん!」
向かいに座るドリトスを見てたので、隣に座るセルヴァンの表情が曇った事に気付かなかった。
「セルヴァン。お主、さっき何を思った?」
ドリトスはセルヴァンに確認する。
いや。確認する必要はないだろう。
思いはドリトスも『同じ』なのだから。
「いや。その・・・」と口ごもるセルヴァンと、「何かあったのですか?」と話が見えないジタン。
ジタンから『今後の対応』の相談を受けて、さくらの部屋を辞した今は、ジタンの執務室にいる。
「さくら殿の世界に住む動物を『召喚生物』として呼べるようになるらしい」と説明すると、ジタンも「それは・・・」と暗い顔をした。
3人とも顔を見合わせて深く息を吐く。
「やっぱり・・・さくら様は『自らのご意思』で、この世界にいらっしゃった訳ではないのですね」
「今までの『乙女』たちと違う立場で、いつも『笑顔で前向き』だから気付きにくいが。家族と引き離されて、この世界に一人放り出されたんじゃ。・・・あの『魔法生物』が過剰なくらい世話をしておるから、寂しさを感じずに済んでおるのかもしれぬが」
「神々と話もしている」
「それはいつのことですか?」
「『いつも』じゃ」
「さっきも話をしていた」
セルヴァンの言葉に「さっきもですか!」と驚くジタン。
それだけではない。
あの部屋は『神殿と同様』に清浄化されていた。
それは『神がきている』ことを意味している。
「我々は『とんでもない相手』を前にしておるのやもしれんのう」
『神の使者』という相手を・・・




