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第183話




陽は既に落ち、ガーデンパーティーが行われている庭園では、聖なる乙女たちを囲んで穏やかに時が流れていた。


そんな中、ヒナリも家族との再会を楽しんでいた。



「ヒナリ。ヨルクはどうした?」


エレアル(父)の言葉に、ヒナリは目を伏せ黙って首を左右に振る。

それに大きな溜息を吐くエレアル。

幼くして両親を亡くしたヨルクを引き取ったエレアルだったが、ヨルクは『家族』として心を開いてはくれなかった。


・・・それは『仕方がない』ことだった。


当時暮らしていたマヌイトアは、セリスロウ国の中でもコーティリーン国にほど近い丘陵地にあった。

ヨルクの家族や自分の妻(ヒナリの母親)、そして仲間たちの多くは、当時各地で繰り返し起きていた『マヌイトア襲撃事件』に巻き込まれてしまった。

その日は自分とヒナリは他国に『族長と次期族長』として出席していて不在だった。

連絡を受けて慌てて戻った時には、ヨルクの両親はヨルクを守るために『(ガイ)』を展開して消滅していた。

妻は子供たちを庇って亡くなっていた。

その子供たちも一人を残して母親のあとを追うように息を引き取っていた。

翼族は『比翼』の片翼が亡くなれば残った片翼も同時に亡くなる。

子供たちは『比翼の死』が原因だった。


『比翼の死』が唯一適応されないのは『族長夫婦』のみだ。

そのため自分は妻を(うしな)っても生き残ることが出来た。

当時のマヌイトアで生き残った者達を、セリスロウ国の王城に招いて庇護してくれたのがセルヴァン国王だった。

そして襲撃で受けた傷が癒えた頃に、王城のすぐ近くにマヌイトアを作らせてくれた。


両親を亡くしたヨルクを癒したのは、セリスロウ国の王城にある豊富な蔵書だった。

彼には兄がいたが、襲撃を受ける3年前に『比翼の死』で突然亡くしている。

だからこそヨルクの両親は我が子(ヨルク)を大切に育て命懸けで守ったのだ。


『知識があれば二度と辛い思いをしなくて済む』


幼いヨルクはそう信じて蔵書を読み続けていた。

時には寝食を忘れて何日も・・・

セルヴァンたちはそれを止めずヨルクの好きにさせた。

小さなヨルクが一人でも蔵書を読みに来られるよう、マヌイトアは王城近くに作られたのだ。


・・・そうして得た知識が『大切な存在(さくら)を呪いから救う』ことに結びついたのだった。




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