表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/449

第180話




「ヒナリ。もしあの時『さくらが消えなかった』ら、どうなっていたか分かるか?」


『さくらが消えなかったら?』

そんなこと考えもしなかった。


セルヴァンにヒナリは首を左右に振る。



「・・・さくらのココロが壊れてる」


苦しそうに絞り出されたヨルクの呟きに、ヒナリの目が驚きで見開かれる。


「そうだ。そして『ココロの壊れたさくら』を守るために、神の手で記憶を消されて二度と此処へは戻ってこない」


セルヴァンの言葉にヨルクは以前聞いた神々の言葉を思い出した。

あれは『解呪された直後』の話だ。

神々は『さくらを守るため』なら、さくらに嫌われても実行するだろう。


「さくら・・・・・・わたし・・・なんてことを・・・」


『事の重大さ』にやっと気付いたヒナリは、ワナワナと身体を震わす。


「ヒナリ。『さくらを守る』ということは『さくらを傷つけない』ことが大前提だ。・・・それが出来ないのなら今すぐ『さくらの前』から居なくなれ」



冷たいセルヴァンの台詞。

しかしそれは『さくらを守るため』だ。

此処には『さくらを守るもの』が必要であって『さくらを傷つけるもの』は不要なのだ。


「セルヴァン様。私にもう一度!もう一度だけチャンスを下さい!」


俯いていたヒナリが決意を秘めた真っ直ぐな目をセルヴァンに向ける。


「『次』はないぞ」


「はい!」


「じゃあ。さくらを迎えに行く前に」


そう言ってヨルクがヒナリの顔に『治癒』魔法をかける。

泣き続けて浮腫(むく)んだ顔が、真っ赤になっていた目が、ヨルクの魔法で元に戻っていく。


ヨルクは今までヒナリに触れることは決してしなかった。

触れてしまえば、救いを求めるヒナリの心は無意識に頼り、その温もりに『(すが)ってしまう』だろう。

それでは『ヒナリのためにならない』。

冷たいようだが、ヨルクもヒナリには『さくらを守る』自覚をして欲しかったのだ。



「ヨルク。・・・『さくらが今いる場所』を知ってるの?」


ヒナリの言葉に「いいや」と首を左右に振り、「でもハンドくんがドリトス様を『呼びに来た』んだろ?」とセルヴァンを見上げる。


「ああ。いまはドリトスと温室にいる」


「さくらは・・・私を許してくれるでしょうか」


「許してもらえなかったら、さくらのそばにいることを諦めるか?」


「いいえ。許してもらえるまで・・・たとえ許してもらえなくても、もう一度私のことを信用してもらえるように努力します」


ヒナリはそう言ったが、ヒナリが心から謝罪をすればさくらは許すだろう。

そしてハンドくんたちは『さくらが許したのだから』と今回は許してくれるだろう。


・・・しかし『次』はない。


さくらから『ヒナリとの記憶』が消されて『ヒナリという存在は何処にもいなかった』ことになるだけだ。




『それだけは回避させたい』と誰もが思っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ