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第176話



リビングでヒナリを落ち着かせようと頑張っているヨルクを見守っていたドリトスに、ハンドくんが【ジタンの部屋へ来て下さい】とホワイトボードを見せる。

【さくらに何かあったのか?】とセルヴァンが書くと、【さくらを此処には戻せませんから】と書かれてヒナリを指し示す。


「確かに。・・・セルヴァンが此処に残っていた方が良さそうじゃな」


ドリトスの言うとおり、ヒナリが手をつけられなくなりヨルクでは抑えられない状態になった時を考えれば、セルヴァンが残った方が良いだろう。



「さくらを連れて『温室』におるからのう」


「分かりました。さくらの事を頼みます」


『屋上庭園』に行かないのは、ヒナリが何度も探しに行っているからだ。

温室にさくらがいるときは、ハンドくんが温室周辺に結界を張ってくれるから、『害意』を持つ者は近付くことが出来ない。

何より『さくらの親衛隊』が遠巻きにガードしてくれるだろう。

彼らはさくらのジャマをしないために『視界に入らない』ように気をつけているのだ。


・・・もしもの時は、さくらだけ『鉄扉』から逃がす。



ドリトスとセルヴァンはそう決めていた。

ハンドくんにも『相談済み』だ。

『もしも』の時になれば、さくらは『自分一人だけ逃げる』のを嫌がるだろう。

その時はハンドくんたちに多少強引でも、さくらを鉄扉の中へ運んでもらうためだ。


襲撃者の狙いは間違いなく『さくら』だ。

そのさくら(ターゲット)がいなければ意味がない。

襲撃は『失敗』になるのだから。

何よりドリトスとセルヴァンの2人は『強い』。

ヨルクも『魔法攻撃』は得意だ。

ヒナリは『攻撃魔法』は苦手だが『守備魔法』はけっこう得意な方だ。

だが、そんな彼らも『怒気に弱いさくら』を守って戦うとなれば、制限されてしまう。

それなら『誰もが無事』で済ますには、『さくらを安全な場所へ逃がす』のが一番なのだ。




セルヴァンはヒナリとヨルクに目をやる。

ヒナリが落ち着けばハンドくんがドリトスに教えるだろう。

自分たちが迎えに行ってもいい。



セルヴァンはヒナリの様子を見て深くため息を()く。

今のヒナリはさくらの名前を繰り返し呼びながら泣きじゃくっている。

その姿は『怒気騒動』でさくらがいなくなった時のヒナリと重なる。

唯一違うのは、今回の原因が『ヒナリ本人』だという点だ。

そのため、泣きながら謝罪しているのだ。

ヨルクはヒナリの気持ちが分かっているから、セルヴァンたちの手を借りようとしない。

セルヴァンたちもヨルクの考えが分かっているから、手を貸さないで見守っていた。



・・・しかし、それもそろそろ限界に近かった。






ドリトスはハンドくんの誘導でジタンの執務室に招き入れられた。

執務室とその周囲の廊下には結界が張られており、『人()け』の魔法が周囲にかけられていたのだ。

中ではソファーに座ったさくらが、以前作っていた『新聞紙』のハリセンを振り回して「やーだー!」と足をバタつかせて泣き騒いでいた。

ローテーブルは窓際へ移動されており、さくらが暴れてもケガをしないようにされている。


「これは一体どうしたのかね?」


ドリトスが困った表情で自身を出迎えた部屋の主(ジタン)に目を向ける。

ジタンの横には『ハリセンで何度も叩かれている』執務補佐官が控えている。

どうやら『原因』は彼のようだ。


ドリトスの目に気付いた補佐官が「申し訳御座いません」と頭を下げた。





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