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第170話



笑顔で最上階の部屋へと帰って行ったさくらだったが、10分も経たずに『変装した姿』で戻ってきた。

それも『空間をとび越え』て・・・


ソファーで泣きじゃくるさくらを抱きしめて落ち着かせていたら、気付くと泣き疲れたのかジタンに(もた)れて眠っていた。

隣の仮眠室のベッドにさくらを寝かせたジタンは、途中で投げ出していた執務を早く片付ける事にした。

そうすればさくらとの時間を作ることが出来る。

ハンドくんは何も教えてくれないのだ。

いまは眠るさくらに付き添って、(なぐさ)めるように頭を撫でている。

何があったのか、さくら本人からゆっくり話を聞いた方が良さそうだと判断したのだ。

さくらは「ヒナリが『いらない』って・・・」と泣いていた。

思い出すのも(ツラ)くて話したくないなら、市井で何を食べたのかなど話を聞くのでもいい。






「おーい。ジタン。ちょっとイイか?」


「どうぞ。・・・一体どうされたのです?」



ヨルクが疲れた表情で執務室に入ってきたのだ。

「なあ。さくらがコッチに来てないか?」と言いながらヨルクは室内を見渡していたが、「ここにもいないかー」と大きく息を吐いて崩れるようにソファーに座り込む。



「何があったのですか?」




ヨルクの話だと、起きたらさくらがいなくなっていた。

『ハンドくんたちと一緒に外へ出掛けてくるね』という伝言が残されていたのだが、ヒナリが過剰というか異常なくらいに心配をした。

そして帰ってきたさくらの話も聞かず、「勝手に何処へ行ってたの!心配したのよ!」と頭ごなしに怒ってしまった。

さくらは「心配しないように『置き手紙』を残していった」のだ。

それでも心配したのはヒナリの方だ。

ヨルクたちも『ハンドくんが一緒だから』と言ったのだが、ヒナリは町へさくらを探しに行こうとまでしていた。


それはハンドくんと神による二重の結界に(はば)まれて実行出来なかったが・・・



なんでヒナリが怒っているのか分からないさくらだったが、その様子が更にヒナリの(いか)りに火をつけてしまった。

そして感情が高ぶっていたヒナリが思わず「さくらのバカ!もう知らない!」と言い放ってしまったのだ。

その言葉にショックを受けたさくらは、その場から『文字通り』消えてしまった。



それを見たヒナリは悲鳴をあげて部屋から飛び出した。

狂ったように部屋から屋上庭園までさくらの名前を叫びながら探し回ったが、見つけることは出来ず。

半狂乱になって手がつけられなくなったらしい。



「いまのヒナリは何を言ってもダメなんだ。『怒気』の一件で『さくらを失う恐怖』を。『エルフ族の襲撃』で『さくらを(うしな)う恐怖』を味わったから。・・・さくらの事になると取り乱してしまうんだ。今でも眠ってるさくらを見ると『このまま目を覚まさないのではないか』と怯えているし、さくらの姿が見えないだけで落ち着かなくなってしまう。とりあえず今は、魔法で強制的に眠らせて結界内に閉じ込めているけど・・・」



ヨルクは言葉を濁す。

魔法で眠らせると『眠らせる前の感情』を半減させられるが、高ぶった感情の場合はそのまま残ってしまう事がある。

いまのヒナリでは目覚めてもたぶん半狂乱のままだろう。

目覚めたときにさくらがいれば落ち着くだろうが・・・

でもそれは『オレたちの都合』だ。


ヒナリの言葉でさくらも酷く傷ついているハズだ。

あの時のさくらは泣きながら消えたのだから。


・・・ヒナリの言葉に傷ついたさくらの表情が、『あの目』が忘れられない。





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