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第169話



「たっだいまぁー」


はい。ジタンにおみやげ〜。とジタンが渡されたのは木箱。

中には白い球体がついた『カフスとタイピンのセット』が入っていた。


「これねー。私の世界では『真珠』っていう宝石なんだよ」


なんでも、朝市でさくらが出会った青年の作品らしい。

青年は海辺で取れる貝を加工調理する仕事をしていたが、今は貝の中から時々見つかる『真珠』でアクセサリーを作って販売しているそうだ。


「でもね。そういう『新しいこと』って『有力な後ろ盾(スポンサー)』がつかないと売れないんだって。だから朝市で屋台広げてたんだけど・・・『エラソーで悪そーでオツムが不出来(ザンネン賞)な奴』が因縁つけて『全部寄越せ』って言ったんだよ!」



でね。ジタンがスポンサーになってくれないかな?

この国の『新しい特産品』になったら国も潤うよ?


さくらの話だと、元の世界では『真珠で有名になった町』もあるらしい。

貝殻の表面を削って作る『カメオ』という物を特産品にしている国もあるそうだ。


ジタンは木箱に入れられたタイピンを手に取ってみる。

確かにさくらが『宝石』と言っただけのことはあって美しかった。


「あとね。そこには『珊瑚』もあるんだって。まだ数点しかアクセサリーに加工出来てないって言ってたけど」


珊瑚もアクセサリーになるんだよ。

どこか必死なさくらに気付いて『何か気になった事』があるのか聞くと、さくらはクチを閉ざして俯いた。

『エラソーで悪そーでオツムが不出来(ザンネン賞)な奴』が、青年を『田舎者』と嘲笑(あざわら)っていたらしい。

そして周りの人々は『男や取り巻き連中』に恐れを為したのか、誰一人青年を庇おうとしなかった。


さくらはそれが『悲しかった』のだ。



「さくら様は?」


「助けに行ったよ。そうしたら『ガキだから分からんだろうから教えてやる。誰につけば『いい暮らし』が出来るか』って言われたの。『キレーな顔だから『イイ声でナケば最上級の暮らし』が出来るぞ』って」


でもハンドくんたちが『騒動』を起こしてくれたため、さくらは青年とその場から逃げ出すことが出来たそうだ。

青年の荷物はハンドくんたちが瞬時に片付けて、安全な場所まで運んでくれたらしい。


「この世界って『歌手』は裕福な生活が出来るのかな?この世界の『歌』って『賛美歌』なのかな?」とハンドくんに聞く。

『ヒナリが『子守唄』を歌っていたこともありますよ』と教えられたさくらは「そういえば歌ってくれたね」と笑っている。


さくらの言葉にジタンは青くなっていた。

さくらは気付いていないようだが『囲い者』として目をつけられたようだ。

ハンドくんたちが騒動を起こしたという事実がある以上、そこから調査をさせれば相手が誰だか(おの)ずと分かるだろう。



「さくら様。アクセサリーを売っていたその青年は、自分に似ていませんでしたか?」


執務補佐官に声をかけられて彼を見上げる。


「・・・似てる。よね?ハンドくん」


『はい。違うのは『髪と肌の色』でしょう。例えるなら、あちらは『日に焼けた海の男』で、こちらは『日にあたらないモヤシ』ですね』


ハンドくんの出したホワイトボードの言葉にさくらはクスクスと笑い出す。

『モヤシ』を知らない2人だったが『誉められていない』ことは分かった。


「さくら様がお会いした青年は実弟です」


とんだ御迷惑をお掛けしまして。と頭を下げる執務補佐官にさくらは「悪いのはアッチ!」と言い切る。

そして「兄弟でしょ!何で弟を庇ってあげないの?何にも悪いことしてないのに!」と怒り出す。


彼は『弟の事でさくら様が巻き込まれた』事に謝罪しているのだが、さくらには謝罪される理由はなかった。

助けに飛び出したのは『さくら自身』の意思だからだ。

謝罪ではなく『弟を助けてもらったお礼』なら、さくらも喜んだだろう。


両者の意思をジタンは把握したが、()ずは『さくらの機嫌』を取り戻さないと、その後ろでハリセンを手にしているハンドくんの怒りを買ってしまう。


・・・それだけは何としても阻止したい!


さくらの怒りを抑えるには『一つ』しか思い当たらなかった。


「さくら様。先ほどの『真珠』と『珊瑚』の件は前向きに検討させて頂きますね」


そうジタンが言うとさくらの怒りはすぐに消えて笑顔になった。



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