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第168話



「ジッターン♪」


さくらがジタンの執務室へ顔を出した。


「さくら様?如何(いかが)なされたのですか?」


「あのね。『おこづかい』ちょ~だい♪」


「『お小遣い』・・・ですか?」


ジタンの言葉に「うん」と頷いて嬉しそうに笑うさくら。


「あのね。町に出て『食べ歩き』して来ようと思ったの」

「そしたらハンドくんがね。『ジタンが『おこづかい』をくれますよ』って!」


ハンドくんには魔石の代金を『金貨』で支払っている。

しかし『食べ歩き』するには『銅貨』の方が良いのをハンドくんは知っているようだ。

そしてハンドくんは『気付いている』のだろう。



「皆さんはご存知なのですか?」


「んーん。知らな〜い」


笑顔で顔を横に振るさくら。

「でもね。ちゃんと『ハンドくんとお外に行ってくる』って伝言は残してきたよ」と自慢するように話す。

ヨルクが何も言わずに繰り返しいなくなるため『ヨルクよりエライ』と思っているようだ。

その後ろからはハンドくんがハリセンを手にジタンに脅しをかけている。

『早く『おこづかい』を渡せ』と。

そして『机の引き出し』の前に現れた別のハンドくんが、引き出しを指さしている。


・・・そんなことしなくてもお渡ししますよ。


町に出られるなら銅貨が多い方が良いでしょう。

ジタンは机の引き出しを開けて、中から袋を取り出す。

これはジタンが『町へお忍びに出る』時に貰ったお金だ。

しかし『少し使っただけ』で終わってしまった。

すぐに『視察』と同じように護衛が付き、『買い食い』も『食べ歩き』も叶わなくなってしまった。

それでも毎年『予算』が出ていて、毎年渡されている。

それを執務補佐官たちが、市井の調査をする時の『お土産代金』として使っている。

使えば、その分『お金が回る』のだ。

・・・今度から『さくら様のおこづかい』として予算を出しましょう。



「どうぞ。中に数枚の銀貨と50枚近い銅貨が入っていますよ」


「わーい!ありがとう!」


さくらは渡された袋を腰につけたポーチに入れる。

アイテムボックスとなっているのだろう。

シュルンと麻袋が、袋の半分もない小さなポーチに入っていった。


それにしても・・・


「その『御姿(おすがた)』で出掛けられるのですか?」


そうジタンに尋ねられると「ヘンかな〜?」とその場でクルクル〜と回る。

今のさくらは変装しており、見た目は町に住む『少年』と大差はない。

そう。

衣装は『城下町に住む普通の少年』そのものだが、見た目も赤茶色のクルクルした髪(天然パーマ)をした少年の姿だった。

さくらが部屋の扉から顔を出した時も、一瞬誰か分からなかった。

ただ『笑顔』でさくらだと分かったのだ。

そして後ろにハンドくんが現れて『確信』したのだ。

『声』も『姿にあわせたような少年の声』だった。

・・・さくらの『魔法のひとつ』だろう。



「よくお似合いですよ」


そう誉められると笑顔になって「じゃあ、行ってきまーす!なにか『お土産』買ってくるね〜」と大きく手を振って執務室を駆け出して行った。



「ジタン様。今の『少年』は・・・?」


「さくら様です」



変装されて市井(しせい)に向かわれました。

さくらと入れ違いに執務室へ入ってきた、執務の補佐をしている幼馴染みにそう答えると「ああ。やはり」と頷く。

何に対して納得しているのだろうか。

そうジタンが聞くと「御自身の『今の顔』を見てご覧なさい」と言われてしまった。

立ち上がり、後ろの窓ガラスに顔を(うつ)したが特に普段と変わらない見慣れた顔があるだけだ。


下に目を移すと、庭園内を駆けていくさくらの姿があった。

どうやらハンドくんは『王城内』を調べ尽くしているのか、兵士たちに見つからない城下町へと続く『隠し通路(ルート)』にさくらを誘導しているようだ。

後ろから突っついたハンドくんに促されたのか、振り向いたさくらが2階のジタンに気付いて笑顔で大きく手を振る。

それに応えるように手を振り返したジタンは、窓ガラスに映った自身に驚いた。

目尻を下げた表情は『さくらバカ』代表のヨルクと何ら変わらなかった。


「ようやくお気付きになられましたか?さくら様の話をされる時は、いつもその表情になっていますよ」


公式の場で『さくら様の話』をされる時は御注意下さい。

下々(しもじも)(しめ)しがつきませんから。


ようやく気付いたジタンに苦笑しつつ、苦言を呈するのを忘れなかった。




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